高齢化とともに増加する日光角化症患者
五十嵐 近年,わが国ではAK患者が増加しており,年間10万人以上が新規発症していると報告されています※。その理由としては,高齢者人口の増加やオゾン層破壊による紫外線照射量の増大が挙げられ,患者数は今後さらに増加することが予想されています。
先生方は日常の診療を通して,こうした現状を感じていらっしゃいますか。
安元 九州地方は低緯度で紫外線照射量が多く,高齢化も進行していることから,患者数も増加しているものと思われます。しかし,特に高齢者の場合,AKの症状があっても気に留めずに受診しない人が多いため,潜在的な患者も含めた患者動向の把握は困難です。
竹之内 当院におけるAKの患者数は,2012年までの24年間で右肩上がりに増加しています。年齢層別に見ると40〜60歳代では変化がないのですが,70〜80歳代の増加が著しく,20年前はほとんどいなかった90歳代の患者も最近では増えていて,高齢患者の増加がAKの全患者数を押し上げていると考えられます。
五十嵐 われわれの施設でも,ここ数年は年間20例ほど治療しています。AKは東京のような都市部でも決してまれな病気というわけではありません。それに安元先生が指摘されたように,受診しない人を含めると実際の患者数はもっと多いことが予想されます。
AKの症状を自覚して受診する患者が少ない中で,先生方はどのようにして患者を見つけていらっしゃるのでしょうか。
安元 湿疹など他の皮膚疾患で受診した際に患者から「ついでに,この赤い部分も診てください」と言われて診察するケース,あるいはこちらが顔面のAK病変に気付くパターンがほとんどです。AKを主訴に受診する患者はほとんどいません。その他は,自身は気にしていないけれど,家族に勧められて受診したという人ですね。
竹之内 当院は紹介患者が多いため,受診動機はつかみにくいのですが,AKが悪性腫瘍につながる病気だと思って受診する人はほとんどいないのではないでしょうか。
五十嵐 確かに,黒色腫については悪性の可能性を心配する人もいますが,AKは赤色なので気にする人は少ない印象です。私たち皮膚科医はAKを見逃さないよう,他の皮膚疾患を主訴に受診した場合でも,患者の顔を注意深く観察することが必要ですね。また,AKについて一般に向けて啓発していくことも今後の重要な課題といえます。