小児の慢性便秘は小児科の先生方も多く診療されておられますが、小児外科医が意外と多くの症例を診療しているのが実際です。私は小児慢性機能性便秘症のガイドライン1(2013年発行。以下、GL)作成にかかわった経験から、今回、小児の慢性便秘の特徴や治療について概説したいと思います。
正常な排便
健常児の排便回数は年齢、授乳法、食事、社会的習慣、利便性、家族の文化的信条、家族内の関係、日常の活動時間などの影響を受けますが、通常1日あたり0~3ヵ月の乳児では母乳栄養児で平均2.9回、人工乳栄養児で2.0回、6~12ヵ月児で1.8回、1~3歳児で1.4回、3歳以上で1回と報告されています1。正常な排便とは姿勢やいきみ方、消化管生理機能や大脳機能、肛門括約筋機能、食事内容など、さまざまな要素が関連し遂行される活動であり、便秘はこれらの幾つかの要素の不調和が複雑に絡み合って発症することが多いようです。特に排便習慣が未確立な乳幼児期では、不十分な便排泄に伴う直腸内での過度の便塊貯留[fecal impaction(便塞栓)]が便意を鈍化させ、排便時の痛みも加わり、排便回避(排便我慢)につながり便秘が悪化する悪循環に陥りがちとなります(図1)1。正常な排便のメカニズムとは、随意的な腹圧亢進の元に、恥骨直腸筋と内外肛門括約筋の弛緩と協調した適度な便排出力を有することと言えます。慢性便秘の病態としては便の結腸通過時間が長い、骨盤底筋の奇異収縮または不十分な弛緩(排便協調障害)が認められたり、これらが組み合わさることもあります。便秘の原因となる排便回避は、乳幼児では習慣化しやすいのも特徴的です。その原因として、痛みを伴う排泄、肛門裂傷、肛門周囲の炎症、性的虐待、痔、環境の変化、家族のストレス、不適切なトイレットトレーニング、情緒障害などが挙げられます1。
図1
便秘の悪循環
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