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循環器領域における医療DX~AI医療の現在と未来~

鍵山暢之先生の肖像写真

鍵山 暢之 先生

順天堂大学医学部附属順天堂医院 循環器内科
併任准教授・保健医療学部デジタルヘルス遠隔医療研究開発講座 准教授

2008年北海道大学医学部卒。ピッツバーグ大学およびセントルイス・ワシントン大学研究留学、ウエストバージニア大学博士研究員などを経て、2020年より現職。

現在、日本の医療は医師や看護師不足・地域格差などの問題を抱えており、その解決の一手として医療分野におけるAI導入への期待が高まっています。その一方で、AI特有の弱点やAI診断の責任問題といった解決すべき課題も残されており、今後の臨床実装にはさらなる取り組みが求められます。今回、順天堂大学医学部附属順天堂医院 循環器内科 併任准教授・保健医療学部デジタルヘルス遠隔医療研究開発講座 准教授である鍵山暢之先生に、医療DXにおけるAIの役割や循環器領域でのAI活用の可能性についてお話を伺いました。

AI技術における
Machine Learning、
Deep Learningの概念

昨今、AI(Artificial Intelligence;人工知能)技術の発展は目覚ましく、「Machine Learning(機械学習)」や「Deep Learning(深層学習)」といった言葉を耳にする機会も増えたと思います。AIは1950年代にその概念が提唱されましたが、定義は曖昧で、「人間のように知能を持っているかのように振る舞うプログラム」全般をAIと呼んでいます図11)一方で、AIのなかでもデータから規則性を学習するプログラムをMachine Learningと呼んでおり、1980年代に登場しました。そして2010年代には、Machine Learningのうちニューラルネットワークと呼ばれるアルゴリズムを活用したDeep Learningが登場し、その性能の高さからAI技術への関心が高まり、実用化が進みました。私たちの身の回りでは、翻訳ツールやスマートフォンの顔認証・指紋認証などにDeep Learningが活用されており、医療現場においてもその有用性が示されつつあります。

  • 人間の脳神経回路(ニューロン)を模した数理モデル(機械学習手法)

図1AI技術におけるMachine Learning、Deep Learningの概念

AI技術の発展においてMachine Learning、Deep Learningが登場したことを示す年表
  • Seetharam K, et al. Echo Res Pract 2019 ; 6 : R41-R52より作図
  • 資料作成提供 鍵山 暢之 氏

医療DXにおけるAIの役割―予防、診断、治療の観点から―

医療DXとは、医療分野においてデジタル技術を用いて効率化を図り、医療の質の向上を目指す取り組みであり、その実現のためにAIは重要な役割を担うと考えます。

鍵山暢之先生の肖像写真

まず予防についてですが、これまでは病気にかかっていない人のデータを収集する機会が少なく、予防に関するエビデンスは乏しい状況でした。しかし、現在ではスマートフォンやスマートウォッチで歩数、睡眠時間などを記録することが一般的となり、未病時のデータを収集できるようになりました。この未病時のデータを用いて、疾患リスクとなる生活習慣や環境因子を検討する研究などを実施する際、膨大なデータを解析するのにAIが役立つと考えます。

次に診断は最もAIを活用しやすく、AI導入によるメリットを享受できる分野と言えます。これは、Deep Learningが得意とする画像認識技術が画像診断に応用しやすいためです。がん領域では、内視鏡画像やX線画像のAIによる自動解析がすでに実臨床に導入されています。

治療については、治療方針の検討をサポートする役割として導入が増えると考えています。例えば、AIが膨大な文献の情報を解析し、エビデンスに基づいた薬剤選択を提示するといった役割が期待されます。将来的には、エビデンスや診療ガイドラインに精通したAIが医師の診療をサポートすることも考えられます。

循環器領域における
AIの現状と展望

循環器領域では画像データを用いて診断することが多く、心電図や心エコー検査のAI活用に関する研究・開発が盛んに行われています。

心電図は一般的な検査で、検査数が多く、すべてのデータを医師が判読することは困難です。そのため、大量のデータを扱えるAIによる自動解析への高いニーズがあります。既報では、心電図のAI自動診断モデルは専門医と同程度以上の精度で異常を判読したことが示されました2)さらに、大量の心電図データを学習し作成されたモデルを用いて、12誘導心電図から発作性心房細動3)や左室駆出率(LVEF)の低下4)を高精度で検出できたことが報告されています。私たちのグループでも、心電図から冠動脈石灰化や弁膜症を予測するモデルを作成した研究結果を報告しています5,6)このように、人間では読み取れない心電図の微細な変化から心機能の低下などをAIにより推測する可能性について、複数の研究が進められています。

心エコー検査は非侵襲的で、心機能を評価する重要な検査です。一方、計測に適した画像を描出するには熟練が必要であり、検査者間誤差が大きく再現性が低い検査とされています。この課題解決のため、AIを活用し撮像時の断面やプローブ操作を指示してくれる医療機器が登場しています。当院では、実際に心エコー検査の撮像や計測値解析の補助としてAIを導入しており、検査時間の短縮、検査者の精神的・身体的負担の改善、検査者間誤差の軽減を実感しています。2024年にはAIを用いた心エコーの自動計測が、検査の効率性に及ぼす影響を評価した無作為化比較試験「AI-ECHO RCT」を実施しました図2)。今後は、AIによる医療従事者の負担軽減の仕組みを他の施設にも実装し、広く普及させるための方法についても研究していきたいと考えています。

図2AIを用いた自動計測が心エコー技師のワークフローに及ぼす影響:無作為化比較試験(AI-ECHO RCT)

AI-ECHO RCTの概要を示した図
  • 資料作成提供 鍵山 暢之 氏

AI医療機器の課題とは

医療分野におけるAI研究・開発が進み、その導入への期待が高まっていますが、臨床への応用・普及が進んでいるとは言いがたい状況です。普及の障壁となっているAIの特性(弱点)は、主に2つあります。

1つ目は「ブラックボックス問題」です。AIは、インプットからアウトプットへ規則性を持って結果を導き出しますが、特にニューラルネットワークを用いるDeep Learningではその過程が複雑であることから、どういった経緯でその結果が得られたか人間には理解できないブラックボックスが存在します。心電図のAI診断のように、心機能が悪いとの結果が出て、その判断の根拠がわからなかったとしても、次に心エコー検査で心機能を再度評価できれば大きな問題とはなりません。しかし、AIが死亡リスクのある手術をやるべきだとの結果を出した時に、根拠がわからなければ手術を実行することはできません。大きなリスクを伴う医療行為において、ブラックボックスは重大な問題となります。

2つ目は「オーバーフィッティング(過学習)」です。AIは何らかのデータを収集・学習しモデルを構築しますが、学習するデータセットに特有のルールをみつけ、そのデータに過度に適合したモデルとなった結果、その条件下以外では役に立たないものになっていることがあります。例えば、心臓専門病院のデータを用いたモデルを一般病院で使用すると、心疾患のない患者さんでも心疾患と判定される頻度が高く、精度が落ちる可能性があります。どのようなデータを学習させればよいのか、学習するデータセットを知り、異なる施設でも精度を担保できるか検証することが重要です。

このように、臨床で信頼できる性能をAIに発揮させるためには、解決しなければならない課題が残っています。AIが誤った回答を出しても医師が介入でき、患者さんに大きな不利益が生じない分野から、まずは普及が進んでいくと考えます図3)。

図3臨床実装のために必要なAIの考え方

臨床実装に向けた課題を解釈の難易度とリスクの2軸で示したマトリクス図
  • 資料作成提供 鍵山 暢之 氏

AI医療の臨床実装を目指して

現在、少子高齢化に伴い、循環器疾患を含め国内の医療ニーズが高まる一方、医療従事者不足が深刻化し、医療従事者の業務負担・心身の負担は増大しています。このような問題を解決する方法の1つがAI導入による医療の効率化や標準化であると考え、AI研究に取り組んできました。これまで、AIが医療分野でどのようなことができるのか多くの研究成果が発表され、AIは計り知れない可能性を秘めていることが認識されてきました。しかしながら、実臨床での運用を体系化し、普及させていくための議論には至っていません。これからは、AIのバイアスやリスクなども踏まえた臨床実装論の確立が求められますし、承認されたAI医療機器の市販後の評価を集積していくことも重要になります。

私たちも新たなAI活用の可能性について研究を進めるとともに、実臨床のワークフローにどのようにAIをあてはめられるのか、臨床現場で使いこなせるか、導入後どのように業務改善できるのか、臨床実装に資する研究にも注力したいと思います。

AI時代は、基本的な医療技術がますます重要に

実臨床にAIを導入していくためには、どのようなAI医療機器・ソフトウェアが開発、上市されているのかを知り、医療AIの知識を深めることがまず必要です。その上で、ご自身の施設のワークフローにどのように組み込めるのか、業務改善できるものかを精査することが重要です。また、AIは医師の代わりをできるわけではなく、診療をサポートするツールの1つであり、判断の責任は医師にあることを念頭に置く必要があります。時にAIは人間ではあり得ない間違いをすることがあり、いつも正しい結果を導くとは限りません。

将来、AIがありふれた医療技術となったとしても、治療方針や治療目標を患者さんとともに共同で決定していくのは医師の役割です。したがって、医師はAIの結果の正否を判断できるように、医療の基本的な知識と技術を継続的に習得することが不可欠です。加えて、患者さんとの共同意思決定を実現するためのコミュニケーションスキルの向上が求められます。AIは医療の可能性を広げるものですが、重要なことは、そのリスクを理解した上で適切に活用し、患者さんにとって最善の医療を提供することです。

鍵山暢之先生の肖像写真

出典

  • 1)Seetharam K, et al. Echo Res Pract 2019 ; 6 : R41-R52
  • 2)Kashou AH, et al. Cardiovasc Digit Health J 2020 ; 1 : 62-70
  • 3)Attia ZI, et al. Lancet 2019 ; 394 : 861-867
  • 4)Attia ZI, et al. Nat Med 2019 ; 25 : 70-74
  • 5)Farjo PD, et al. Eur Heart J Digit Health 2020 ; 1 : 51-61
  • 6)鍵山 暢之. 循環器専門医 2021 ; 30 : 29-34