適切な排便コントロールを行うポイントは①便のかさを増やす②便を軟らかくする③腸の蠕動運動を促進する、の3点であると考えられます。これらを解決するには、十分な水分および食物繊維の摂取、乳酸菌やマグネシウムなど排便を促す効果のある栄養素を補うことが必要です。しかし、慢性便秘を訴える患者さん、特に高齢者では食事全体量および水分摂取量が少なく、活動量の低下があるため上記栄養素の推奨量を満たすことが困難になることから、患者さんの現在の食事内容、摂取量を確認し、疾患・身体状況を考慮しながら補給するのが望ましいと考えます。
食事摂取のアセスメント
食事摂取をアセスメントするためには、現在食べている食事の特徴を知っておく必要があります。「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」の食物繊維やマグネシウムの推奨量からみると1、当院病院食を全量摂取していても不足傾向となります(図1)。全粥食をはじめとした軟菜食や咀嚼・嚥下困難食などにおいては、水分量は増加するものの、食物繊維や他の栄養素はさらに提供量が少なくなっています。病院給食ではコストや献立の展開上、使用する食品の幅が狭くなりがちですので、どうしても微量元素や食物繊維まで充足させることが難しくなります。施設によって前後はありますが、食事を全量摂取しているからといって排便を促す十分な栄養量が必ずしも摂れているわけではないことを理解しておく必要があります。乳酸菌は、ヨーグルトなどの乳製品や乳酸菌飲料を毎日継続して摂取しているか確認します。
さらに、食事以外の飲水をどの程度とっているかの確認が必要です。大まかとなりますが、普通に食事をとっている場合でも飲水で約1,200mL/日未満であれば、水分が不足している可能性があるといえます2。腎疾患や、心疾患で水分制限を必要とする患者さんの場合は、さらに摂取量が少なくなります。これらを把握したうえで、まず水分を増やすのか、他の栄養素を補うのかを検討することになります。
図1
日本人の食事摂取基準推奨量*からみた当院病院食の食物繊維量とマグネシウム量†の充足率
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