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- 日常診療・患者指導に役立つ豆知識 ~循環器領域を中心に~
- 第1回 患者さんからサプリメントと医薬品の違いを聞かれたら?
監修:滋賀医科大学 医学部医学科 内科学講座 循環器内科 教授 医学博士 中川 義久 先生
外来診療において患者さんと話す内容は多岐にわたります。病歴聴取や体調などの医療面接としての内容だけではありません。その中で話題となることが多いのがサプリメントについてです。「日常診療・患者指導に役立つ豆知識」の初回としてサプリメントについて考えてみたいと思います。
サプリメントと医薬品の違いですが、サプリメントに法的な定義はなく、一般的には「特定の成分を含有する錠剤やカプセル状の製品」が該当すると考えられます。一方、医薬品は病気の診断・治療・予防の目的で使用され、国の基準に基づいて薬効が承認・認可されたものです。サプリメントは錠剤やカプセル状の製品が多く、医薬品のような効果を暗示する広告もあるため、患者さんは病気の改善を期待してしまうかもしれません。しかしサプリメントはあくまでも食品です。
食品の中でも、健康に良いことをうたった食品全般は健康食品と呼ばれますが、この健康食品にも法的な定義はありません。ただし国の制度に基づいて機能性を表示可能な保健機能食品があります(図)。
図 健康食品の分類
※ 原則として医薬品との誤認を避けるため、 食品に「治る」など医薬品的な効果を表示することはできません。
保健機能食品のうち、特定保健用食品(トクホ)は、健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められており、保健機能や許可マークを表示できます。栄養機能食品は、1日に必要な栄養成分(ビタミンなど)を補給・補完するために利用できる食品で、栄養成分の機能表示が可能です。機能性表示食品は、事業者の責任で科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品です。しかし、サプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、自然食品などは「その他健康食品」とされ、保健機能食品のように機能性を表示できません。
通常、サプリメントは「その他健康食品」に分類されますが、栄養機能食品の基準を満たしていれば、栄養機能食品に含まれることもあります。栄養機能食品の表示対象となる成分は20種類です(表1)。
表1 栄養機能食品として機能表示ができる栄養成分
- ミネラル
- カルシウム、亜鉛、銅、マグネシウム、鉄、カリウム
- ビタミン
- ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、葉酸
- 脂質
- n-3系脂肪酸
この中には医薬品にも用いられるn-3系脂肪酸が含まれるため、たとえばEPA製剤を服用中の患者さんに対しては、n-3系脂肪酸を含む栄養機能食品やサプリメントの併用を確認することが求められます。
近年、サプリメントや健康食品の利用が拡大しています。健康食品(特にサプリメント)は医薬品と誤認されることもあるのですが、医薬品と健康食品には大きく3つの違いがあります(表2)。
表2 健康食品と医薬品の主な違い
医薬品 | 健康食品 | |
---|---|---|
製品の品質 | 同じ品質のものが 製造・流通するようになっている。 |
「同じ名称」でも 全く品質の異なるものが存在している。 |
科学的根拠の 質と量 |
病者を対象とした安全性・有効性の試験が実施されている。 | 試験管内実験や動物実験が主体であり、病者を対象とした試験はほとんど実施されていない。 安全性試験があったとしても対象は健常者である。 |
利用環境 | 医師・薬剤師により、 安全な利用環境が整備されている。 |
あくまで食品の一つであり、 製品の選択・利用は消費者の自由 |
サプリメントは、その見た目から医薬品と同じように扱い、病気の治療に役立てようと考える患者さんもいます。サプリメントの効果を期待するあまり、患者さんが自己判断で医薬品の服用を中断して病状が悪化したり1)、サプリメントと医薬品を併用することで、医薬品の効果減弱や副作用の増強を引き起こしたりします2)。薬剤治療中、もしくはこれから治療を開始する患者さんには、現在服用している健康食品、サプリメントの有無を聞き取り、治療中の利用については医師や薬剤師に相談するようご指導ください。
1) 加藤綾子ほか. 日本医事新報. 2014; 4722: 115-1182) Asher GN, et al. Am Fam Physician. 2017; 96(2): 101-107
2023年9月作成
17342-1 B1 MDC