脳神経内科で便秘症に気を付けなければならない疾患として、パーキンソン病(PD)とレヴィー小体型認知症(DLB)が挙げられるのではないでしょうか。
PDは一般人口1,000人中1人程にみられ、脳神経内科で多い疾患です。一方、人口高齢化を受け、認知症が話題となっています。認知症は、80歳台の3人中1人にみられるともいわれます。当大学病院では、脳神経内科と精神科の2科が認知症の窓口となり、認知症疾患医療センターを一緒に運営し、地域患者さんの受け入れを行っています。認知症の原因となる変性疾患は、アルツハイマー病が最も多く、次にDLB(PDが大脳に広がった病気といわれます)が多くみられます。さらに、生活習慣病であるかくれ脳梗塞が、重なってみられることが少なくありません。DLBは、認知症5人中1人にみられるともいわれ、決して稀な病気でありません。本疾患では、大人の寝言(夜中にわーっと大きな声を出すなど、レム睡眠行動異常ともいわれます)が特徴的にみられます。
PD/DLBでは、便秘が高頻度(8割程度)にみられ、排便回数が週に1-2回に低下し、排便時の困難感がみられます。これらの患者さんに排便機能検査(図1, 2)を行いますと、以下に述べるAとBがしばしば同時にみられます。
A. 大腸通過時間の延長:正常では39時間が上限ですが、しばしば60-120時間と異常延長がみられます。これを輸送遅延型便秘といいます。
B. 排便時の蠕動運動の低下/消失・腹圧の低下・肛門の弛緩不全(アニスムス)・残便。これらを直腸肛門型便秘といいます。
そのメカニズムは、PD/DLBが全身疾患であり、腸管壁内神経叢に「レヴィー小体」がみられるためと考えられており、一部、脳幹・基底核などの脳病変もかかわると考えられています。これらは、PD/DLBの初期からみられます。
図1
大腸通過時間検査
(colonic transit time)~健常人の例.
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