Q2検診で心雑音を指摘された無症候例2
難易度★☆☆
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最も可能性が高いと考えられる疾患は?
患者情報
検診で心雑音を指摘された45歳男性。
精査目的で循環器内科を受診した。
明らかな胸部症状はない。
解 説
高調な雑音の音量は概ね一定で、最強点の心尖部ではS1やS2を認識することは難しい。このような雑音は逆流性と考えられ、選択肢の中では僧帽弁逆流に合致する。本例のように全収縮期逆流性雑音を呈する疾患は僧帽弁逆流・三尖弁逆流・心室中隔欠損のいずれかである。なお僧帽弁の逆流量が多くなるとS3や拡張期ランブル(カーリー・クームス様雑音)を伴うことがあるが1,2)、本例では認められない。また雑音の大きさと逆流の重症度は必ずしも相関しないことも知っておきたい。
Step Up !
全収縮期逆流性雑音は等容収縮期から等容拡張期に及ぶため、S1とS2は雑音に埋没することが多い(心音図A、赤四角)。よって不明瞭なS2は逆流性雑音を示唆するが、音量が小さい場合(本例では2R)ではS2を認識することができる。また肺動脈弁領域の周辺(本例では2Lと3L)ではS2の肺動脈成分を聴取する(心音図A、矢印)。重症の僧帽弁逆流では収縮中期~後期に左房圧が上昇して雑音が漸増・漸減するダイヤモンド型になり1,2)、ますます大動脈弁狭窄との鑑別が難しくなる。しかし大動脈弁狭窄による駆出性雑音とは異なり、僧帽弁逆流による逆流性雑音が鎖骨に放散することは稀である(心音図B)。またQ1で示したように、先行するRR間隔に応じた音量変化の有無も両者の鑑別に役立つ(駆出性雑音では目立ち、逆流性雑音では乏しい)。
心音図A
心音図B
- 1)Bleifer S, et al. Am J Cardiol. 1960;5:836-842.
- 2)Sutton GC, et al. Br Heart J. 1973;35:877-886.