Q1検診で心雑音を指摘された無症候例1
難易度★☆☆
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最も可能性が高いと考えられる疾患は?
患者情報
糖尿病と高血圧で加療中の85歳男性。
検診で心雑音を指摘されたが、明らかな胸部症状はない。
解 説
本例では広い範囲で収縮期雑音を認める。この雑音は漸増・漸減する駆出性雑音で、大動脈弁狭窄症に合致する。大動脈弁狭窄の収縮期駆出性雑音は、僧帽弁逆流による収縮期逆流性雑音との鑑別が重要である。通常、前者ではS2を聴取し雑音が鎖骨に伝播するが、後者ではS2は不明瞭で雑音は心尖部周囲に留まる。なお大動脈弁狭窄でも重症になるとS2は減弱してくることがあるため注意を要する(本例は中等度の大動脈弁狭窄)。なお大動脈弁狭窄では雑音の大きさと狭窄の重症度は必ずしも相関しない。
Step Up !
右鎖骨や3Lの心音では途中に心室期外収縮が出現し、代償性休止期後の雑音が少し大きくなっている(心音図A、矢印)。このような現象は僧帽弁逆流などの逆流性雑音ではあまり認めない。また本例では心尖部で巨大なS4を認める(心音図B、赤四角)。大動脈弁狭窄症でのS4聴取は、重症の狭窄と関連することが報告されている1,2)。なお中等度までの大動脈弁狭窄にもかかわらず大きなS4を認める場合は、左室コンプライアンスが低下する他疾患(虚血性心疾患など)の合併を考慮する必要がある。
心音図A
心音図B
- 1)Caulfield WH, et al. Am J Cardiol. 1971;28:179-182.
- 2)Goldblatt A, et al. Circulation. 1962;26:92-98.