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押さえておきたいロコモティブシンドローム・フレイル・
サルコペニアのポイント

2020年05月19日公開

骨粗鬆症、フレイル、
サルコペニアの相互関係

吉村 典子先生

東京大学医学部附属病院
22世紀医療センター
ロコモ予防学講座 特任教授

はじめに

ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、運動器の障害により移動機能の低下をきたし、進行すると介護が必要になるリスクが高い状態のことを言う1ロコモの原因となる運動器疾患のうち、骨粗鬆症は、骨強度が低下することにより骨折のリスクが高くなる骨の障害と定義される疾患である2「平成30年 国民生活基礎調査(平成28年)の結果からグラフで見る世帯の状況」をみると3要介護になる原因の4位が骨折・転倒で全体の12.1%を占めることから、高齢者の生活の質(QOL)の維持増進や健康寿命の延伸、医療費の低減のためには、骨折の原因疾患としての骨粗鬆症の予防は、喫緊の課題であると言える。
サルコペニアは筋肉量の低下を主体とし、握力や歩行速度の低下などの機能的低下をも含む概念であり4筋肉という運動器の障害と考えれば、これもロコモの原因疾患の一つである。さらに、フレイルとは筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念であると定義されていることから5やはり筋力の低下という運動器疾患の概念を内包していると言える。ここでは、ロコモの原因疾患同士の関連をみるにあたって骨粗鬆症に注目し、骨粗鬆症、フレイル、サルコペニアの合併率と、骨粗鬆症とサルコペニアの合併がフレイルの発生に及ぼす影響について述べる。

1. 骨粗鬆症の有病率

我々は、わが国の運動器障害とそれによる運動障害や要介護の予防のために、骨粗鬆症を含む骨関節疾患の基本的疫学指標を明らかにし、その危険因子を同定することを主たる目的として、2005年より大規模住民コホートResearch on Osteoarthritis /Osteoporosis Against Disability(ROAD)スタディを開始した6,7ROADスタディでは、2005-2007年に都市型コホート(東京都)、山村型コホート(和歌山県)、漁村型コホート(和歌山県)と、地域特性の異なる3地域コホートを設置し、3,040人(男性1,061人、女性1,979人、平均年齢70.3歳)の参加を得た(ベースライン調査)。
ROADスタディのベースライン調査参加者の中から、腰椎および大腿骨頸部の骨密度をdual energy X-rayabsorptiometry(DXA)にて測定した山村型、漁村型コホート参加者1,690人(男性596人、女性1,094人、平均年齢65.2歳)を対象に、日本骨代謝学会の骨粗鬆症診断基準を用いて骨粗鬆症の有病率(40歳以上)を求めたところ、腰椎では男性で3.4%、女性で19.2%、大腿骨頸部では男性12.4%、女性26.5%となった6
骨粗鬆症の年代別有病率を図1に示す。これを調査実施時の平成17年度の年齢別人口構成に当てはめて、わが国の骨粗鬆症有病者数(40歳以上)を推定すると、腰椎で診断した場合は約640万人(男性80万人、女性560万人)、大腿骨頸部では約1,070万人(男性260万人、女性810万人)と推計された6これらの診断箇所をまとめて、腰椎か大腿骨頸部のいずれかで骨粗鬆症と判断された患者数は1,280万人(男性300万人、女性980万人)となった。

図1. 骨粗鬆症の有病率

2. 骨粗鬆症とサルコペニア、フレイルとの合併

ROADスタディでは、2008-2010年に実施した第2回調査(山村、漁村)において、筋量、歩行速度、握力、骨密度のすべてを測定し得た山村、漁村在住の60歳以上の男女1,099人(男性377人、女性722人、平均72.1歳)を対象として、4年後の第3回調査まで追跡してサルコペニア、フレイルの発生を観察し、骨粗鬆症がどのように影響を及ぼしているかを明らかにした10骨粗鬆症の診断には、WHOの診断基準を用いた8,9サルコペニアの診断は、Asian Working Group for Sarcopeniaの勧告に従い、(1)年齢:≧60歳、(2)筋量:インピーダンス法により男性<7.0kg/m2、女性5.7kg/m2、(3)握力:男性<26kg、女性<18kg、(4)歩行速度:<0.8m/sのうち、(1)、(2)に加えて、(3)か(4)のいずれかを認めるものをサルコペニアとした4,11フレイルの診断基準はまだ世界的に統一されていないが、Friedらの5項目5〔(1)意図しない体重減少、(2)疲れやすさの自覚、(3)活動量の低下、(4)歩行速度の低下、(5)握力の低下〕を用いられることが多い。そこで、これらの基準のうちの3つ以上が当てはまるものを「フレイルあり」とした。
骨粗鬆症とサルコペニア、フレイルの合併を図2に示す。骨粗鬆症の視点からみると、サルコペニアの合併は19.2%、フレイルの合併は11.6%であった。一方、サルコペニアの視点でみると、骨粗鬆症の合併は58.5%、フレイルの合併は30.5%にみられた。フレイルからみると骨粗鬆症の合併率は51.8%、サルコペニアの合併率は44.6%であった。

図2. 骨粗鬆症、サルコペニア、フレイルの合併(年齢≧60歳)

3. 骨粗鬆症とサルコペニアがフレイルの発生に及ぼす影響

骨粗鬆症がサルコペニア発生に対する影響をみるために、追跡期間(4年)中のサルコペニア発生の有無を目的変数とし、骨粗鬆症(腰椎L2-4か大腿骨頸部のいずれか)の有病状態(0:なし、1:あり)を説明変数として、性、年齢、居住地域(山村、漁村)、やせ(BMI<18.5kg/m2)、飲酒、喫煙の有無を補正して、ロジスティック回帰分析を行った結果、骨粗鬆症の存在は将来のサルコペニアの発生リスクを有意に上げていることがわかった。逆にサルコペニアの存在は骨粗鬆症の発生リスクを上げる傾向にあるが、有意ではなかった。この結果から、骨粗鬆症を早期発見して早期治療を行うことは、骨粗鬆症による骨折のみならず、サルコペニアのリスクをも低減できる可能性が示唆された10
次に、骨粗鬆症とサルコペニアの合併がフレイルの発生にどのような影響を与えているかを解明するために、追跡期間中のフレイル発生の有無を目的変数とし、骨粗鬆症(腰椎L2-4か大腿骨頸部のいずれか)とサルコペニアの有病状態(0:いずれもなし、1:骨粗鬆症のみあり、2:骨粗鬆症とサルコペニアの合併あり)を説明変数として、性、年齢、居住地域(山村、漁村)、BMI、飲酒、喫煙の有無を補正して、ロジスティック回帰分析を行った。骨粗鬆症の存在は、フレイル発生のリスクを有意に上げていることがわかった。加えて、骨粗鬆症とサルコペニアの合併は、骨粗鬆症のみの存在に比べ、将来のフレイルの発生リスクをさらに上げていることがわかった(図311
これらの結果から、骨粗鬆症の存在は、骨粗鬆症による骨折のリスクを上げるだけでなく、将来のサルコペニア、フレイルの発症のリスクを上げることがわかった。フレイル発症のリスクは、骨粗鬆症とサルコペニアの合併によりさらに上昇していた。そのため、骨粗鬆症の予防は、介護予防にとって極めて重要であることが明らかになった。

図3. フレイル発生と骨粗鬆症とサルコペニア(年齢≧60歳)

  • 1中村耕三:日整会誌. 82:1-2, 2008
  • 2NIH:Consensus Development Panel JAMA, 285(6):785-795, 2001
  • 3厚生労働省:平成30年 国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフで見る世帯の状況
  • 4Chen LK,et al.: J Am Med Dir Assoc.15(2):95-101, 2014
  • 5Fried LP, et al.: J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 56(3):M146-M156, 2001
  • 6Yoshimura N, et al.: J Bone Miner Metab. 27:620-628, 2009
  • 7Yoshimura N, et al.: Int J Epidemiol. 39:988-995, 2010
  • 8WHO:WHO Technical Report Series. 843:1-129, 1994
  • 9Kanis JA, et al.: Osteoporos Int. 24(11):2763-2764, 2013
  • 10Yoshimura N, et al.: Osteoporos Int. 28(1):189-199, 2017
  • 11Yoshimura N, et al.: Osteoporos Int. 29(10): 2181-2190, 2018