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押さえておきたいロコモティブシンドローム・フレイル・
サルコペニアのポイント

2020年09月01日公開

ロコモティブシンドロームの
原因としての脊椎加齢変性疾患 
−その2 脊柱管狭窄−

橋爪 洋先生

和歌山県立医科大学整形外科学講座
准教授

はじめに

脊柱管狭窄症は、変形性関節症、骨粗鬆症とともにロコモティブシンドローム(ロコモ)の三大要因の1つにあげられ、介護保険法の規定する「特定疾病」の1つにも指定されている1しかし、脊柱管狭窄症の疫学的指標、すなわち有病率や画像所見と症状の関連などは長らく不明であった。われわれは運動器の大規模疫学研究Research on Osteoarthritis Against Disability (ROAD)2のサブコホートとして、2008年から和歌山県内2地域(山村地域と漁村地域)の住民を対象に、脊椎加齢変性疾患の疫学研究The Wakayama Spine Study (WSS)を開始した。WSSの特徴はROADの基本的調査項目2に加えて、脊椎疾患に関連する詳細な問診と診察、全脊柱MRIを導入したことである。今回、WSSベースラインデータの横断的分析から得られた脊柱管狭窄に関する知見を紹介する。

対象と方法

2008-10年に実施されたベースライン調査では、1,011名(男性335名:女性676名)に対し整形外科専門医が脊椎疾患に関する問診と診察を行った。このうち、心臓ペースメーカーを装着していた2名を除く1,009名(男性335名:女性674名、年齢66.3±13.6歳)に全脊柱MRIを撮像した3当該部位の手術既往がなく、撮像範囲が適切かつ画質が良好なものは頚椎977名(男性324名:女性653名)、腰椎967名(男性319名:女性648名)であった4
画像上の脊柱管狭窄について、頚椎ではT2強調矢状断像上の頚髄圧迫(cervical cord compression:CCC)として5段階評価(grade 0-4)を5腰椎ではT2強調横断像上の中心性狭窄(radiographic lumbar spinal stenosis:rLSS)として4段階評価(なし、軽度、中等度、高度)を行った3,6
診察では、痛み・しびれの部位と程度、持続期間、姿勢との関連、間欠跛行の有無などについて問診を行い、理学所見として、四肢腱反射、Hoffmann反射、Babinski反射、Kemp徴候、四肢の痛覚・触覚・深部感覚を調べた。さらに、身体能力として握力、10秒掌握テスト、開眼片脚起立時間、5回椅子立ち上がり時間、歩行速度、歩幅を測定した。MRIと問診結果、神経・理学的所見と合わせて、臨床的な頚髄症(cervical myelopathy:CM)と腰部脊柱管狭窄症(symptomatic lumbar spinal stenosis:sLSS)の診断を行った4
統計解析により、性別・年代別(50歳未満、50代、60代、70代、80歳以上の5階級)の画像上狭窄有所見率、画像上狭窄と(臨床的な)頚髄症/腰部脊柱管狭窄症との関連、身体能力との関連を検討した4

結果

  • CCC(grade2以上=脊髄前後径の明らかな減少を伴う圧迫)は、参加住民の24.4%(男29.3%、女21.9%)に認められた。このうちCMと診断されるものは男性3.2%、女性16.1%であった。CCCの有所見率は有意に男性の方が多く、男女とも加齢とともに増加していた(図1)。高位別にみると、CCCの有所見率はC5/6、C4/5、C6/7の順に高かった。性別、年齢、BMIで調整したロジスティック回帰分析の結果、CCC有所見者は非有所見者と比較して有意に10秒掌握回数、5回椅子立ち上がり時間、歩幅、歩行速度が劣っていた5
  • rLSS(中等度以上の狭窄)は、対象住民の76.5%に認められた。一方、sLSSと診断されるものは対象住民の9.3%(男性の10.1%、女性の8.9%)であった3rLSSの有所見率に男女差はなく、加齢とともに増加していた(図2)。高位別にみると、rLSSの有所見率はL4/5、L3/4、L2/3の順に高かった6一方、sLSSの有病率は男性では60代がピークであったのに対し、女性では加齢とともに増加していた(図3)。性別、年齢、BMIで調整したロジスティック回帰分析の結果、rLSS有所見者は非有所見者と比較して有意な身体能力の低下を認めなかったが、sLSS有病者は非有病者と比較して有意に6m最大歩行速度が劣っていた3
  • Grade 2以上の頚髄圧迫と高度の腰部脊柱管狭窄を同時に有する人(tandem spinal stenosis)は、評価対象とした931名中102名(11%、男14.1%:女9.4%)に認められた。腰部脊柱管狭窄(高度)を有する人の中で頚髄圧迫を有する人の割合は男性45.3%、女性31.7%であった7

図1. 頚部脊柱管狭窄(CCC)の有所見率

図2. 腰部脊柱管狭窄(rLSS)の有所見率

図3. 腰部脊柱管狭窄症(sLSS)の性別・年代別有病率

考察

参加住民における画像上のCCCとrLSSの有所見率が各々24.4%、76.5%と高かったのに比し、実際に頚髄症あるいは腰部脊柱管狭窄症と診断されるものの割合が小さかったことは、臨床上重要な示唆を与えている。つまり、画像所見のみに頼っての診断、あるいは手術適応や除圧部位の決定は厳に慎まなければならない。一方、疫学的な見地から、CCCあるいはrLSSの有所見者は近い将来に疾病を発症する可能性のあるリスク集団と言える。CCCについては頚髄症発症以前から身体機能に影響を及ぼす可能性があること、rLSSについては有所見者数の圧倒的な多さから、その対策が健康寿命延伸のための重要課題であることは疑う余地がない。また、頚部脊柱管狭窄と腰部脊柱管狭窄の併存は稀ではないことが判明した。臨床的に下位頚椎部での脊髄圧迫は上肢症状を伴わないことがしばしばある。腰部脊柱管狭窄症患者を診察する際には、上肢症状の有無に関わらず頚部脊柱管狭窄の併存を念頭に置く必要がある。

  • 1厚生労働省:特定疾病の選定基準の考え方
  • 2Yoshimura N, et al.: Int J Epidemiol 39:988-95, 2010
  • 3Ishimoto Y, et al.: Osteoarthritis Cartilage 20:1103-08, 2012
  • 4橋爪 洋ほか:Journal of Spine Research. 5(9):1271-1275, 2014
  • 5Nagata K, et al.: Spine 37:1892-98, 2012
  • 6Ishimoto Y, et al.: Osteoarthritis Cartilage 21:783-788, 2013
  • 7Nagata K, et al.: Eur Spine J 26:2529-35, 2017