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押さえておきたいロコモティブシンドローム・フレイル・
サルコペニアのポイント

2020年07月07日公開

ロコモとフレイル、
サルコペニアの合併

吉村 典子先生

東京大学医学部附属病院
22世紀医療センター
ロコモ予防学講座 特任教授

はじめに

ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、運動器の障害により移動機能の低下をきたし、進行すると介護が必要になるリスクが高い状態のことを言う1フレイルとは、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念である2サルコペニアは筋肉量の低下を主体とし、握力や歩行速度の低下など機能的低下をも含む概念である3ロコモとフレイルやサルコペニアは全く別々の立場から生まれてきた疾患概念であるが、サルコペニアはフレイルの身体的要素であると同時に、筋肉という運動器の障害であることから、ロコモとフレイルは完全に独立した疾病概念ではなく、いずれもサルコペニアという疾患を内包しており、お互いに深く関連し合っている。今回は、ロコモとフレイル、サルコペニアがどの程度合併しているのか、お互いの内包関係について述べる。

1. ロコモとフレイル、サルコペニアの合併

我々は、わが国の運動器障害とそれによる運動障害や要介護状態を予防するために、運動器疾患の基本的疫学指標を明らかにし、その危険因子を同定することを主たる目的として、2005年より大規模住民コホートResearch on Osteoarthritis /Osteoporosis Against Disability (ROAD) スタディを開始した4ROADスタディでは、2005~2007年に、都市型コホート(東京都)、山村型コホート(和歌山県)、漁村型コホート(和歌山県)と、地域特性の異なる3地域コホートを設置し、3,040人(男性1,061人、女性1,979人、平均年齢70.3歳)の参加を得た(ベースライン調査)4,5
さらに、2012~13年に実施したROADスタディ第3回調査から、ロコモの検査として下記ロコモ度テストを実施し、ロコモ度1、ロコモ度2を判断した。その結果、ROADスタディ第3回調査のロコモ度テスト参加者1,575人(男性513人、女性1,062人)のうち、全体の69.8%(男性68.4%、女性70.5%)がロコモ度1に該当し、全体の25.1%(男性22.7%、女性26.3%)がロコモ度2に該当することがわかった6

1)ロコモ度17

① 立ち上がりテスト:片脚で40cmの高さから立つことができない
② 2ステップテスト:1.3に達しない
③ ロコモ25:7点以上

①~③のうちひとつでも該当すれば、その対象者はロコモ度1該当と判定され、移動機能の低下が始まっている状態と判断される。

2)ロコモ度27

① 立ち上がりテスト:両脚で20cmの高さから立つことができない
② 2ステップテスト:1.1に達しない
③ ロコモ25:16点以上

①~③のうちひとつでも該当すれば、その対象者はロコモ度2該当と判定され、移動機能の低下が進行している状態と判断される。

1.1 ロコモ度1とフレイル、サルコペニアの合併

ROADスタディ第3回調査では、同様の対象者にフレイル、サルコペニアの検査も実施しており、ロコモとフレイル、サルコペニアの合併の状況を知ることができる。そこで、まずロコモ度1、フレイル、サルコペニアの合併状況を調べた。フレイルの診断基準はまだ世界的に統一されていないが、Friedらの5項目がよく用いられる8我々もFriedの5項目、すなわち、①意図しない体重減少、②疲れやすさの自覚、③活動量の低下、④歩行速度の低下、⑤握力の低下の基準のうち、3つ以上が当てはまるものをフレイルありとした。サルコペニアの有無は、Asian Working Group for Sarcopeniaの勧告を参考に3①年齢:≧60歳 、②筋量:インピーダンス法により男性<7.0kg/m2女性<5.7kg/m2③握力:男性<26kg、女性<18kg、④歩行速度:<0.8m/sのうち、①、②に加えて、③か④のいずれかを認めるものをサルコペニアとした4
60歳以上でロコモ度テスト、フレイル、サルコペニアの検査を完了し得た963人(男性321人、女性642人)を対象として、ロコモ度1、フレイル、サルコペニアの合併状況を調査した結果を図1に示す9この図から、ロコモ度1に該当する人は、フレイルおよびサルコペニアに該当するほぼすべての人を含有していることがわかった。

図1. ロコモ度1とサルコペニア、フレイルの合併

1.2 ロコモ度2とフレイル、サルコペニアの合併

ロコモ度1と同様に、60歳以上でロコモ度テスト、フレイル、サルコペニアの検査を完了し得た963人(男性321人、女性642人)を対象として、ロコモ度2、フレイル、サルコペニアの合併状況を調査した結果を図2に示す9この図から、ロコモ度2はロコモ度1よりも該当率が低いものの、ほぼフレイルおよびサルコペニアの有病者を含有していることがわかった。

図2. ロコモ度2とサルコペニア、フレイルの合併

おわりに

地域住民の調査結果から、高齢者ではまずロコモに代表される移動能力の低下が始まり、それらがサルコペニアやフレイルにつながっていくと考えられる。移動能力の低下は気づきにくいが、早く気づけば介入して改善が見込める。これから迎える百寿時代、サルコペニアやフレイルを予防し、いつまでも自分の足で歩ける高齢期を迎えるためには、ロコモの予防がキーとなると思われる。しかし、まだロコモ度1、ロコモ度2についても予防に最適な方法は開発されていない。今後これらの疫学指標などのエビデンスを基に、予防法の開発が進むことが期待される。

  • 1中村耕三:日整会誌. 82(1): 1-2, 2008
  • 2日本老年医学会:フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント. 平成26年5月
  • 3Chen LK, et al.: J Am Med Dir Assoc.15(2): 95-101, 2014
  • 4Yoshimura N, et al.: Int J Epidemiol 39: 988-995, 2010
  • 5Yoshimura N, et al. J Bone Miner Metab. 27: 620-628, 2009
  • 6Yoshimura N, et al.: Mod Rheumatol. 27(1): 1-7, 2017
  • 7ロコモチャレンジ! 推進協議会:ロコモ度判定方法.https://locomo-joa.jp/check/judge/pdf/locomo-testjudge.pdf
  • 8Fried LP et al.: J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 56(3): M146-M156, 2001
  • 9Yoshimura N, et al.: J Bone Miner Metab. 1-9, 2019, in press. https://doi.org/10.1007/s00774-019-01012-0