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よりぬき産婦人科トピックス

2022年1月18日公開(2022年10月25日変更)

子宮内膜症と消化器疾患

太田 郁子先生

太田郁子ウィメンズクリニック 院長

本コンテンツは、OG SCOPE Vol.10 No.1 臨床最前線(2019年7月発行)の記事を一部再編集しております。

はじめに

子宮内膜症は他の臓器にも発生することから、他科疾患と合併していることも少なくありません。今回は最も子宮内膜症と関連が深い消化器疾患に焦点を当てたいと思います。子宮内膜症に伴う痛みに対する薬物治療をプロゲスチンやLEP剤で行っても軽減しない、または無月経なのに下腹部痛を訴える患者さんがいます。これらの「謎の下腹部痛」「謎の月経痛」について述べたいと思います。

子宮内膜症に関連する消化器疾患

子宮内膜症女性のクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の発症リスクは最大50~80%高いと報告されています1) (表1)。またDIE(深部子宮内膜症:Deeply Infiltrating Endometriosis)を含め、腸管に浸潤する腸管子宮内膜症による下腹部痛も指摘されています。子宮内膜症で術後の場合は、術後癒着痛の可能性も考慮されます。
したがって、ホルモン剤による薬物療法治療中に患者さんが下腹部痛を訴えて来院された場合は、消化器疾患について精査する必要があります。

下腹部痛の診断

まずいつから疼痛があるのか?下痢・便秘・吐き気・血便などの消化器症状を伴っているか?発熱や反跳痛を伴っているか?を問診します。PID(骨盤内炎症性疾患:Pelvic Inflammatory Disease)やチョコレート嚢胞の破裂であれば容易に診断できますが、長期にわたる鈍痛で、疼痛位置が移動し、下痢や便秘などの消化器症状を伴っている場合は、消化器科に紹介する必要があります。
筆者が子宮内膜症薬物療法中に下腹部痛を主訴に婦人科に来院した女性の疾患を示します(表2)。SLE(全身性エリテマトーデス:Systemic Lupus Erythematosus)などの慢性炎症性疾患と同じく、腸疾患は月経と同期して増悪し、症状を呈することが多く2)、子宮内膜症女性の多くは消化管性疼痛も月経困難症の疼痛として訴えます。したがって、我々はまず薬物療法によって子宮内膜症性疼痛を軽減したのち、残存して定期的に生じる下腹部痛を鑑別することが望ましいと考えられます。下腹部痛を呈する下部消化管疾患の臨床所見の特徴について示します(表3)

潰瘍性大腸炎、クローン病を合わせて、IBD(炎症性腸疾患:Inflammatory Bowel Disease)と称します。そして大腸内視鏡検査等で、異常が認められないが、IBDの類似する症状を呈する場合は、ほとんどがIBS(過敏性腸症候群:Irritable Bowel Syndrome)であると考えられます。診断基準はRome Ⅳが使用されています3)(表4)。IBD、IBSなどは強弱のある鈍痛が数週間ほど持続してから受診されることが多く、薬物療法中は不正出血を伴うことも珍しくありません。特に経口のプロゲスチンやLEP剤投与中に不正出血を伴う下腹部痛を呈する場合は、数日以上の薬剤吸収能の低下の可能性があり、消化器疾患を考えます。また下痢と比較して、慢性の便秘症を呈していることが多く、便秘症候の聴取が重要と思われます。子宮内膜症女性の29%に慢性便秘症またはIBSがあり、消化器科の治療で86%において排便が改善したとも報告されています4)。消化器科での大腸内視鏡検査を勧めますが、結果として炎症性腸疾患や虚血性大腸炎、子宮内膜症癒着による閉塞性イレウスなどであれば、消化器科で治療が開始されます。しかし、大腸内視鏡検査で異常なしの場合はIBSと診断されます。IBSは器質的異常はないが、腸管の蠕動が過蠕動または寡蠕動になり起こる異常と考えられます。子宮内膜症女性は腸管腹膜に内膜症病変や癒着があることが多く、これら子宮内膜症から起こる腸管の機能異常は消化器科ではIBSと診断されることもあります。これは子宮内膜症病変が腸間膜・腸表面に存在しても、大腸内膜まで貫通していないと大腸内視鏡で診断できないので、ほとんどがこのIBSと診断されてしまうからです。IBSのガイドラインからIBSの疫学的特徴を表5に示します。これらの疫学的特徴からも、IBSの中に子宮内膜症による腸管機能異常が含まれている可能性が示唆されると考えられます5)
またIBDと診断された女性は子宮内膜症の発症リスクが高く、逆に子宮内膜症女性はIBDの発症リスクが高いことが報告されています6)。したがって、子宮内膜症女性の下腹部痛に関してはIBDを念頭に置き、鎮痛剤の投与のみにとどまらず、消化器科での精査を考慮することが重要です。

婦人科の検査から診られる腸管子宮内膜症

経腟超音波検査によって、固い便や過蠕動が確認できます。またMRI検査においても、子宮と腸管の癒着は診断可能であり、これらの症候がある場合はIBSの症候がないか検討する必要があります。近年ではMDCT-e (Multidetector computerized tomography enteroclysis)やVirtual colonoscopyが腸管子宮内膜症の診断に有用であるとされています7,8,9)(図1)
しかし最も重要なことは、子宮内膜症女性はIBDの発症リスクが高いことを念頭に置き、IBD、IBSの症状がある場合、特に血便がたまに認められる場合などは消化器科を受診し、大腸内視鏡検査を受けるよう促すことであると思います。血便を外痔核と自己診断し、IBDを放置している女性も見受けられます。

治療

IBDすなわち器質的疾患である潰瘍性大腸炎やクローン病に対しては消化器科で治療を行い、腸管子宮内膜症による狭窄や結節、S状結腸への浸潤は積極的に切除することが望ましいとされています9)。また慢性便秘症に伴うIBSで腸管の癒着や軽度の壁肥厚が予想され、手術療法を選択しない場合は薬物療法を施行します。IBS-C、IBS-Dの治療には5-HT4刺激薬、5-HT3拮抗薬がガイドラインで提案されています5)。しかし、本邦で現在使用可能な薬剤はモサプリドクエン酸塩※1、ラモセトロン塩酸塩※2しかないのが現状です。IBS-Cの場合は特にご注意いただきたいのが子宮内膜症女性の便秘の薬物療法です。IBS-Cに分類されている場合、治療の第1段階、1段目薬物は粘膜上皮機能変容薬リナクロチドがガイドラインで推奨されています5)。しかし、子宮内膜症で腸管癒着が予想されるIBS-C女性に対しては、やはり第1段階、3段目薬物である浸透圧性下剤、酸化マグネシウムやPEG(ポリエチレングリコール:Polyethylene Glycol)の使用のほうが望ましいと思われます。酸化マグネシウムは浸透圧性下剤として非常に有用ですが、奏効しない場合、患者は投与量を自己判断で増量してしまうことがあります。酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症を回避するためにも、酸化マグネシウムが奏効しない場合はPEGに変更することが望ましいと思われます。欧米においては、すでにPEGが主に使用されています。

※1 効能・効果:慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)、経口腸管洗浄剤によるバリウム注腸X線造影検査前処置の補助(2021年10月時点)
※2 効能・効果:下痢型過敏性腸症候群(2021年10月時点)

まとめ

腸管子宮内膜症による腸管イレウス等は消化器科でいち早く対応してもらえますが、IBDやIBSは患者が症状を訴えても、疼痛管理で経過を観察されていることも多いと思われます。子宮内膜症女性が下腹部痛を訴えているときは、消化器症状や血便の有無に留意し、消化器科受診を促すことが望ましく、また便秘薬を処方する際は、各薬剤の適応や作用機序、副作用などに注意する必要があると思われます。

文献

  • 1)Jess T et al.:Increased risk of inflammatory bowel disease in women with endometriosis: a nationwide Danish cohort study. Gut 2012,61:1279-83.
  • 2)Rosenblatt E et al.:Sex-Specific Issues in Inflammatory Bowel Disease. Gastroenterology & Hepatology 2015,11:592-601.
  • 3)Drossman DA et al.ed.: Rome IV:functional gastrointestinal disorders: disorders of gut-brain interaction.2016.
  • 4)Meurs-Szojda MM et al.:Irritable bowel syndrome and chronic constipation in patients with endometriosis. Colorectal Dis 2010,13:67-71.
  • 5)日本消化器病学会:機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS).2014.
  • 6)Fortuna M et al.:Inflammatory bowel disease and endometriosis:is there a relationship?.Journal of Crohns and Colitis/European Crohns Colitis Organisation 2016,10(suppl1):S201.
  • 7)Biscaldi E et al.: Multislice CT enteroclysis in the diagnosis of bowel endometriosis. Eur Radiol 2007, 17: 211-219.
  • 8)Biscaldi E et al.: Bowel endometriosis: CT-enteroclysis. Abdom Imaging,2007, 32:441-450.
  • 9)Abu Taiub Mohammed Mohiuddin Chowdhury* et al.: Bowel Endometriosis: An Overview. J Gastroint Dig Syst 2014, 4:186.