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よりぬき産婦人科トピックス

2022年2月15日公開

産婦人科医から見た便秘

寺内 公一先生

東京医科歯科大学
大学院医歯学総合研究科
茨城県地域産科婦人科学講座
教授

本コンテンツは、OG SCOPE Vol.9 No.1 最新医学レポート(2018年6月発行)の記事を一部再編集しております。

はじめに

便秘薬を一度も処方したことのない産婦人科医はいないだろう。
患者「ちょっと便秘気味で…」→医師「ではXを処方しておきますね」といったやり取りは、毎日のように外来や病棟で繰り返されている。
ほとんどの産婦人科医にとってXに入る薬剤の選択肢は数種類で、「便を軟らかくする薬」と「腸を動かす薬」との分別や、錠剤・顆粒・内用液剤といった剤型に対する患者の嗜好を考慮して薬剤選択が行われている。近年この領域に起こりつつある変化を視野に入れつつ、産婦人科医にとっての一般的な便秘診療の現状について述べたい。

便秘の性差

「便秘は女性に多い」ことはわれわれの共通認識であると思われるが、そのことは疫学的にも確認されているのだろうか?アメリカの大規模な全国健康調査National Health and Nutrition Examination Survey (NHANES)は、これまで3次にわたり行われているが、第1次調査(NHANES I, 1971~1975)によれば、成人男女における「便秘」と「少ない排便回数(1週間に3回以下)」の有症率は、いずれも女性に多かった(20.8% vs. 8.0%、 9.1% vs. 3.2%)1)。わが国においても状況は同様で、平成28年国民生活基礎調査によれば、便秘の有訴者率(人口千対)は男性24.5人に対し女性45.7人と女性に多い(図1)2)。特に男性では60歳以降に訴えが急増するのに対し、女性では20歳以降一定以上の高い割合を維持しているのが特徴で、産婦人科医が対応するあらゆる年齢層の女性において、便秘が問題となることが分かる。
便秘はなぜ女性に多いのだろうか。様々な因子の関与が推定されているが、黄体期や妊娠期間中に便秘が増加することからも、黄体ホルモンの作用は有力な候補の一つである。例えばXiaoらは、慢性便秘症を呈する女性の大腸ではプロゲステロン受容体の発現が増加しており、おそらくその結果として、腸管の収縮を刺激するGαqプロテインの発現減少と収縮を抑制するGαsプロテインの発現増加が起こっていることを示している3)

産婦人科医にとっての便秘の診断

「便秘の診断はどのように行っていますか?」と訊かれた場合、多くの産婦人科医は答えに詰まるのではないだろうか。そもそも患者側から「便秘している」「便秘気味である」などの訴えがあって話が始まるので、その時点で既に診断はついている。医師側はとりあえず「何日間に1回くらい出る感じですか?」といった問いかけを行ってみるが、「何日間に1回出ていれば便秘とは言えない」という厳密な内部基準を必ずしも持ち合わせているわけではない。
患者「N日間に1回くらいです」→医師「そうですか。それは大変ですね。まずはXを処方しておきますね」といういつもの流れに乗ることになる。
定期的な診療を行っている患者においてはこのようなやり取りすらも省略され、患者「いつもの便秘薬も一緒にください」→医師「はいはい」で終わることも多い。
「便秘症の診断」は厳密にはどうあるべきなのだろうか?
2017年に日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会によって「慢性便秘症診療ガイドライン2017」が定められており4)、現在はこれに従って「便秘症」の診断を行うべきなのである(表1)。この診断基準の中には、産婦人科医には必ずしもなじみの多いとは言えない「ブリストル便形状スケール(BSFS)」が採り入れられているが、患者にとっても医師にとっても視覚的に容易に便の形状を把握することができる(表2)5)。この診断基準に基づけば、「3ヵ月以上の間、自発的な排便回数が週に3回未満で、その1/4超の頻度で兎糞状便または硬便」であれば慢性便秘症ということになる。

産婦人科医にとっての便秘の診療

現行の保険医療制度下では、「よく患者の話を聞いて生活面でのアドバイスを与える」ことへのインセンティブは必ずしも高いとは言えない。ただし、前述のNHANES Iにおいても食物繊維の摂取や運動が便秘のリスク低下に関連することが示されており1)、少なくともこの点は患者に強調しておくべきであろう。 しかしながら、患者も自分なりに生活習慣の見直しに取り組んだ上で、なお改善しない便秘について相談していることが多いので、結局医師側の対応は処方箋という形をとることになる。
便秘薬は世の中に多数存在するが、筆者が日常的に臨床の現場で用いているものを表3に示した。産婦人科医としては、ごく平均的なあり方だと思われる。
本来は慢性機能性便秘症の病態を、(1)残渣の少ない食餌摂取による便量の低下(大腸通過時間正常型便秘)、(2)大腸蠕動の低下(大腸通過時間遅延型便秘)、(3)骨盤底筋群の協調運動障害(機能性便排出障害)、の3病型に分類した上で薬剤選択を行うことが望ましいが、産婦人科の日常臨床では画一的な治療が行われているのが現状である。
酸化マグネシウムは、難吸収性塩により腸管内浸透圧を上昇させ水を腸管内に誘導する薬剤であり、特に妊婦では第一選択として用いられる。ただし腎機能が低下した高齢者などに漫然と投与した場合に高マグネシウム血症を来すおそれがあるので注意が必要である。刺激性下剤は、大腸の筋層間神経叢に作用して腸管の収縮を起こす薬剤である。個々の成分よりもむしろ錠剤・顆粒・内用液剤といった剤型に対する患者の嗜好を考慮して処方される。連用により腸管のカハール介在細胞や壁在神経節が減少するなどの機序により耐性が生じると考えられているが、現実的には漫然と処方を継続している症例も多い。妊婦には原則として使用しない。
漢方薬の中では「便秘」「常習便秘」「宿便」を効能・効果にもつ処方を表3に示した。全ての処方に生薬として大黄が含まれているため、これらは大腸刺激性下剤に分類することが可能であり、妊婦には原則として使用しない。これらの多彩な処方を、いかに証を見極めて使いこなしていくかについては、本稿の目的を逸脱するので別の成書を参考にされたい。また、産婦人科においても開腹術後腸閉塞予防目的で使用されることの多い大建中湯(100)は大黄を含んでおらず、「腹部膨満感」の病名で妊婦にも処方可能である。その他として挙げた炭酸水素ナトリウム・無水リン酸二水素ナトリウムは、腸内において徐々に炭酸ガスを発生させることにより蠕動を亢進させ、排便を促す薬剤である。「そこまで来ているのになかなか出ない」などの訴えに対してよく用いられる。
これらの薬剤はどれも発売されてから数十年が経過しており、かつては「便秘の薬物治療」に関してはこれ以上の進展はないと思われたが、異なる作用機序に基づく薬剤が近年立て続けに発売されている(表4)。上皮機能変容薬は、腸管上皮細胞の機能を変化させることで便秘を改善させる薬剤であり、小腸上皮細胞の管腔側に存在するクロライドチャネルに作用しクロライドイオンを腸管内に分泌させ、腸管内の水を増加させる。ただし、ルビプロストンは妊産授乳婦への投与は禁忌である。エロビキシバットは胆汁酸トランスポーター阻害というまったく異なる作用機序を持つ薬剤であり、回腸末端部の胆汁酸トランスポーターによる胆汁酸の再吸収を阻害することにより大腸に流入する胆汁酸の量を増加させる。大腸に流入した胆汁酸は大腸内の水分分泌を促すとともに大腸の運動を促進させ、自発排便回数を増加させる。
今後これらの薬剤が産婦人科領域でも適切に利用されることが期待される。

参考文献

  • 1)Everhart JE et al.: A longitudinal survey of self-reported bowel habits in the United States. Dig Dis Sci 1989;34:1153-62
  • 2)厚生労働省.平成28年国民生活基礎調査.
  • 3)Xiao ZL et al.: Role of progesterone signaling in the regulation of G-protein levels in female chronic constipation. Gastroenterology 2005;128:667-75
  • 4)慢性便秘症診療ガイドライン2017, p6, 南江堂, 東京, 2017
  • 5)Lewis SJ et al.: Stool form scale as a useful Guide to intestinal transit time. Scand J Gastroenterol 1997;32:920-4