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よりぬき産婦人科トピックス

2022年10月25日公開

妊娠に伴う女性の便秘

疋田 裕美先生

芍薬レディースクリニック恵比寿
院長

本コンテンツは、OG SCOPE Vol.9 No.2 最新医学レポート(2018年10月発行)の記事を一部再編集しております。

産婦人科医であれば、妊娠中の患者さんから便秘について相談されたことは数え切れないほどあることでしょう。

妊婦の便秘について

妊婦の便秘には、いくつか原因が考えられます。
まず、もともと便秘である方です。このような方は、便秘が慢性化しているため一週間排便がなくても問題視しないことがあります。そのため、便秘でも医療側に言わないことも多いのです。また、下剤(便秘解消のお茶などを含む)を使用していたけれども、妊娠に伴い使用をやめたことにより、便秘の症状が出てくることもあります。
妊娠中の便秘は、プロゲステロンの血中濃度が上昇するために腸蠕動が弱まり、腸管通過時間が延長し便が硬くなるために起こりやすいと言われます。特に妊娠4ヵ月頃まではプロゲステロンの分泌が亢進しますし、妊娠悪阻による食欲不振からの食物繊維や水分の摂取の低下も原因と考えられます。
また、増大した子宮が直腸を圧迫して便を快適に排出できないため、残便感を生じやすくなります。
鉄剤のサプリメントの内服でも便秘が起こることがあり、最近は葉酸と鉄のサプリメントを服用する方も増えているので、確認が必要と思われます。

便秘の状態を確認しましょう

便秘の定義は学会でも異なり、明確にすることが実は難しいものです。毎日出ていれば便秘ではないというわけではありません。回数だけではなく、排便時にいきまないと出ない、残便感があってすっきりしない、というものも含みます。患者さんが、「便秘です」とおっしゃる時に、もともとの排便の状態を把握しているでしょうか。便秘の定義は個人差が大きいので、まずは便秘がどのタイプかを確認することが大切です(図1)
まずは、
1)お通じはコロコロした便か柔らかい便か
2)お通じは毎日あるか(回数)
3)すっきり出るか
4)いきまなくても出るか
5)妊娠前はどうだったか
を確認します。
便の形状は、ブリストル便形状スケール(表1)1)を使用するとわかりやすいです。便に含まれる水分量によって7タイプに分類され、タイプ1であれば、水分が足りないので、まずは水分摂取を促します。

生活習慣の指導

妊娠中の患者さんへの生活習慣の指導について図2にまとめました。
順を追って説明します。 朝の時間に余裕をもって、水分を摂り、朝食を食べる 寝起きにコップ一杯の水を飲むことで、胃結腸反射を起こし、腸が動くと言われています。しかし、その後にトイレに行く時間がないと、せっかく起きた便意を止めてしまい排便の習慣がつきません。また、朝食を欠食すると、食時前の空腹時間が長くなり、この反射が失われ、排便が抑えられてしまう傾向にあります。そのため、朝食をしっかり摂ることが大事です。 食事の内容を考える 妊娠中の体重増加を気にして、食事を減らす方が多くいます。食事量が少ないと、それに合わせて食物繊維も減ります。便の量が十分にないと便意も起きません。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると成人女性の食物繊維摂取推奨量は約18g/日です。第六次改定「日本人の栄養所要量―食事摂取基準」では20~25g/日と言われています。しかし、実際の摂取量は約16g/日程度と推定されており、不足気味の方が多い傾向にあります。食物繊維を積極的に摂ることをお薦めします。
食物繊維には、不溶性食物繊維と、水溶性食物繊維があります。
不溶性食物繊維は、植物の皮などに多く含まれ、水分を吸収して数倍から数十倍もの容量になります。そのため、腸壁を刺激して腸の蠕動運動を活発にさせ、便を体外へ排出しやすくさせます。また、咀嚼回数が増えるため、早食いの防止にもなり、胃の中の滞在時間が長いため満腹感が得られるので、食べ過ぎで体重増加を気にする方にはお薦めです。
水溶性食物繊維は水に溶け、食品の水分をゲル状にします。粘性があり、野菜や果物、こんにゃく、海藻類などに多く含まれます。粘度が高く、胃から小腸ヘの食べ物の移動がゆるやかになるため、ブドウ糖の吸収速度を抑えることができ、食後の血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。
どちらも程よく摂取することが必要です。
また、プロバイオティクスは慢性便秘に対して有効性が報告されています。プロバイオティクスとは、適正な量を摂取した時に有用な効果をもたらす生きた微生物のことを指し、腸内細菌のバランスを改善することによりヒトに有益な作用をもたらすと言われます。ヨーグルトや乳酸菌飲料に含有される動物性乳酸菌よりも、お味噌汁、お漬物などに含まれる植物性乳酸菌の方が死滅せず大腸まで到達するため効果が高く、和食中心の食事が良いとされます。味噌汁の摂取回数と早産率に負の相関率を認めている報告もあります。 運動療法 適度な運動は、腸蠕動を促します。妊娠経過に問題なければ歩くことや、ヨガをお薦めします。腹壁マッサージが慢性便秘の改善に有効という報告もあります。お腹のマッサージはお腹が大きくなると難しいのですが、体をねじったり骨盤を動かすことも、腹腔内に刺激を与えるのに役立ちます。

治療について

最も一般的に処方されているのは、浸透圧性下剤の塩類下剤、酸化マグネシウムや水酸化マグネシウムなどではないでしょうか。最近、高齢者の長期服用による高マグネシウム血症の副作用が報道されました2)。妊婦のような比較的若年の方は、腎機能が問題なければ、そのような副作用の可能性が低いと思われます。
刺激性下剤は大腸の筋層間神経叢に作用する薬剤で便秘の治療で使われますが、妊婦の方には原則として使用しません。
漢方薬での下剤もありますが、大黄を含んでいるため控えた方が無難です。
また、最近では、慢性便秘薬として、クロライドチャネルアクチベーターであるルビプロストン、グアニル酸シクラーゼC受容体アゴニストのリナクロチド、胆汁酸トランスポーター阻害剤のエロビキシバットといった治療薬が発売されています(表2)3〜6)。ルビプロストンは、腸管内に浸透圧性の水分分泌を促進することにより、便を柔らかくして腸管の便輸送を高めて排便を促進します。リナクロチドは腸管分泌及び腸管輸送能促進作用並びに大腸痛覚過敏改善作用により、排便異常及び腹痛・腹部不快感の改善に寄与すると考えられます4)。エロビキシバットは胆汁酸トランスポーター阻害という作用機序の薬剤であり、回腸末端部の胆汁酸トランスポーターによる胆汁酸の再吸収を阻害することにより大腸に流入する胆汁酸の量を増加させます。大腸に流入した胆汁酸は大腸内の水分分泌を促すとともに大腸の運動を促進させ、自発排便回数を増加させます。
妊娠中の患者さんは、薬を内服することに抵抗を覚えることが少なくありません。そのため、まずは生活習慣の改善の指導を行うと良いのではないでしょうか。多忙な医師が多いため、指導は助産師や、貧血予防を含めて栄養士による指導も有効と思われます。

参考文献

  • 1)Lewis SJ et al.:Stool form scale as a useful Guide to intestinal transit time.Scand J Gastroenterol 1997;32:920-4
  • 2)酸化マグネシウム添付文書
  • 3)ルビプロストン添付文書
  • 4)リナクロチド添付文書
  • 5)エロビキシバット添付文書
  • 6)慢性便秘症診療ガイドライン2017,P58,南江堂,東京,2017