医聖として知られているHippocratesは、今から約2500年前に痛風の特徴について記述しています1)。「5つの格言」として知られているこの記述には、「去勢者は痛風にかからず、また禿げない」、「女性は月経が止まらない限り痛風にかからない」、「青年は性交前には痛風にかからない」、「痛風の炎症は40日以内に治まる」といったものとともに、「痛風は春と秋に活発化する」という季節変動に関するものが含まれています1, 2)。それでは、近年の痛風・高尿酸血症の季節変動に関する調査では、どのような結果が示されているのでしょうか。
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- 温故知新 痛風と尿酸値の「季節変動」と「日内変動」
痛風・高尿酸血症の日常診療の中で、「この数ヵ月、痛風の患者さんが多い気がする」、「痛風って、朝方に発症する人が多い気がする」といった印象をお持ちの先生、いらっしゃるのではないでしょうか。これらの背景には、痛風や尿酸値の「季節変動」や「日内変動」が影響している可能性があります。
痛風の季節変動・日内変動については、HippocratesやThomas Sydenhamが記述を残すなど、はるか昔から認識されていたことがうかがえます。現在の痛風・高尿酸血症診療においても、痛風や尿酸値の季節変動や日内変動について知っておくことは、長期間に及ぶ治療経過の中で、治療効果の評価や血液検査のタイミングの検討、患者指導の実践において有意義と考えられます。
そこで本コンテンツでは、痛風や尿酸値の季節変動・日内変動に関するデータをご紹介します。
index
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季節変動
痛風発症の季節性 血漿中尿酸濃度の季節性 尿酸降下薬の新規処方の季節性 -
日内変動
痛風発症の日内変動 血清尿酸値の日内変動
季節変動
Seasonal Variations
痛風発症の季節性
痛風関節炎患者を対象とした調査において、痛風を発症する割合は、季節ごと/月ごとに均一ではありませんでした(海外データ)。
尿酸降下薬で治療を受けている痛風関節炎患者を対象に、痛風発症の季節性を検討した後ろ向き観察研究によると、春期(3~5月)、夏期(6~8月)、秋期(9~11月)、冬期(12~2月)の間で発症割合は均一ではありませんでした(p<0.001、Goodness of fit test)3)。
同様に月別に検討した結果、月ごとの発症割合も均一ではありませんでした(p=0.002、Goodness of fit test)3)。
月ごとの痛風発症割合
(後ろ向き観察研究、海外データ)
【対象】 2013年1月~6月に韓国におけるリウマチ科の9施設を受診した、痛風関節炎予防治療を中止後1年以上尿酸降下薬で治療を受けている痛風関節炎(偏光顕微鏡で尿酸一ナトリウム結晶の確認、または米国リウマチ学会の診断基準による)患者330例のうち、痛風発症月の情報を取得できた256例。男性246例、女性10例)
【方法】 カルテレビューにて後ろ向きに痛風発症月を調べ、月ごとの痛風発症割合を検討した。痛風は医師の診断あるいは以下の4つの患者報告のうち3つ以上が合致する場合と定義した(①痛風発作、②安静時の関節痛、③関節の腫脹、④関節の熱感)。
【Limitations】 ①後ろ向き研究で、民族が韓国人に限定されている。②サンプル数が少なく、3次病院の症例であるため選択バイアスの可能性がある。③食生活の変化に関する情報がなく、痛風発症の限られた情報しかないため、食生活や血清尿酸値、脂質と痛風発症の関係を検討することは困難である。
Choi HJ, et al. J Korean Med Sci 2015 ; 30 : 240-4
血漿中尿酸濃度の季節性
成人集団を対象とした調査において、血漿中尿酸濃度は月ごとに均一ではありませんでした。夏期(6~8月)の血漿中尿酸濃度(mg/dL)は、男性6.5~6.6、女性5.1~5.2でした(海外データ)。
スウェーデンの大規模な成人集団を対象に、血漿中尿酸濃度の季節性を検討した研究の結果、血漿中尿酸濃度は男女ともに月ごとに均一ではありませんでした(p<0.0001、Kruskal-Wallis ANOVA)4)。夏期(6月~8月)における血漿中尿酸濃度の中央値(mg/dL)は、男女それぞれ6月で6.6及び5.1、7月で6.6及び5.2、8月で6.5及び5.1でした4)。
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本文献の考察において、「痛風患者の経過を観察していく際には、尿酸濃度の季節変動を考慮に入れるべきである」と記載されています4)。
月ごとの血漿中尿酸濃度の変動
(海外データ)
【対象・方法】 2000年5月15日~2015年12月31日にスウェーデンのウプサラ大学病院の中央検査室にて新鮮な血液サンプルを用いて解析された、血漿中尿酸濃度の検査結果170,915件(男性サンプル80,050件、女性サンプル90,865件)。サンプル採取月ごとに血漿中尿酸濃度の中央値を評価した。
【Limitations】 ①夏期に尿酸濃度が上昇する原因を調べたり、尿酸濃度の上昇と痛風の発症を明確に関連付けたりすることを目的にデザインされていない。②尿酸サンプルを採取した臨床的根拠は不明であった。③夏期に痛風の発症頻度が増加する季節性が、尿酸濃度の上昇に影響を与えていた可能性がある。
Åkerblom A, et al. Clin Rheumatol 2017 ; 36 : 1595-8
尿酸降下薬の新規処方の季節性
国内におけるデータベース観察研究の結果、尿酸降下薬の新規処方のリスク比は冬期に対して夏期と秋期で有意に高値でした(p<0.001、 ANOVA)。
わが国の日常診療における尿酸降下薬の新規処方に関する季節性を検討するため、2019年1月から2022年12月までに疫学レセプトデータベースであるJMDC Claims Databaseから抽出した無症候性高尿酸血症又は痛風患者における尿酸降下薬の新規処方割合を月ごとに検討した研究の結果が報告されました5)。
それによると、観察期間中に尿酸降下薬を新規処方された201,008例(年齢中央値49.0歳、男性95.6%)において、尿酸降下薬新規処方のリスク比[95%信頼区間]は冬期(12~2月)に比べて夏期(6~8月)1.322[1.218, 1.436]と秋期(9~11月)1.227[1.129, 1.335]で有意に高値でした(いずれもp<0.001、 ANOVA)5)。
尿酸降下薬の新規処方のリスク比[95%信頼区間]を疾患の種類(無症候性高尿酸血症/痛風)別に解析したところ、春期(3~5月)は無症候性高尿酸血症において0.912[0.837, 0.993]で有意に低値、痛風において1.212[1.081, 1.359]で有意に高値でした(それぞれp=0.034、p=0.001、 ANOVA)5)。また、夏期と秋期はいずれの疾患においても有意に高値でした(夏期:無症候性高尿酸血症1.190[1.106, 1.299]、痛風1.576[1.414, 1.756]、いずれもp<0.001、秋期:無症候性高尿酸血症1.232[1.137, 1.334]、痛風1.219[1.088, 1.366]、それぞれp<0.001、p=0.001、 ANOVA)5)。
尿酸降下薬の新規処方割合の季節性
(疾患の種類別;サブグループ解析)
【対象・方法】
観察研究。疫学レセプトデータベースであるJMDC Claims Databaseにて、少なくとも過去6ヵ月以内に尿酸降下薬を処方されていない、無症候性高尿酸血症※又は痛風※患者における2019年1月から2022年12月の間の健康診断データを抽出し、月ごとの新規に尿酸降下薬を処方された患者の割合(新規に尿酸降下薬を処方された患者数÷毎月のJMDC Claims Databaseの全患者数)を算出した。集団全体および疾患の種類(無症候性高尿酸血症/痛風)別に、冬に対する春、夏、秋の新規処方に対するリスク比を算出し、季節性の有無を検討した。また疾患の種類別の交互作用についても検討した。
※:ICD-10診断コードを用いて抽出。無症候性高尿酸血症は、痛風(M10)を伴わない高尿酸血症(E79.0)として抽出。痛風は、高尿酸血症(E79.0)の有無を問わずに痛風(M10)として抽出
【Limitations】 ①抽出できる情報が限られていたため、年齢や性別、病型分類、合併症、併用薬、医療機関などの交絡因子を用いた調整をできなかった。また、時不変系な特性に基づくサブグループ解析しかできなかった。②75歳以上の患者の情報は含まれていない。③血清尿酸値や痛風と関連するとされているデータ(周囲温度やアルコール摂取量、肥満、身体活動レベル、食事摂取量など)について検討されていない。④地域別の月平均気温を考慮した解析を行っていない。⑤尿酸降下薬を新規処方された女性患者は男性患者より非常に少なく、これは女性に対する尿酸降下薬の新規処方があまり一般的ではないためだと考えられる。⑥ICD-10診断コードによる無症候性高尿酸血症と痛風の区分は、コードの誤記入などによって実際の状況とは異なる可能性がある。
Kurajoh M, et al. Front Pharmacol 2024 ; 15 : 1230562
月ごとの尿酸降下薬の新規処方割合が示されました。
試験期間における月ごとの尿酸降下薬の新規処方割合は下図のとおりでした5)。
月ごとの尿酸降下薬の新規処方割合の変動
【対象・方法】
観察研究。疫学レセプトデータベースであるJMDC Claims Databaseにて、少なくとも過去6ヵ月以内に尿酸降下薬を処方されていない、無症候性高尿酸血症※又は痛風※患者における2019年1月から2022年12月の間の健康診断データを抽出し、月ごとの新規に尿酸降下薬を処方された患者の割合(新規に尿酸降下薬を処方された患者数÷毎月のJMDC Claims Databaseの全患者数)を算出した。
※:ICD-10診断コードを用いて抽出。無症候性高尿酸血症は、痛風(M10)を伴わない高尿酸血症(E79.0)として抽出。痛風は、高尿酸血症(E79.0)の有無を問わずに痛風(M10)として抽出
【Limitations】 ①抽出できる情報が限られていたため、年齢や性別、病型分類、合併症、併用薬、医療機関などの交絡因子を用いた調整をできなかった。また、時不変系な特性に基づくサブグループ解析しかできなかった。②75歳以上の患者の情報は含まれていない。③血清尿酸値や痛風と関連するとされているデータ(周囲温度やアルコール摂取量、肥満、身体活動レベル、食事摂取量など)について検討されていない。④地域別の月平均気温を考慮した解析を行っていない。⑤尿酸降下薬を新規処方された女性患者は男性患者より非常に少なく、これは女性に対する尿酸降下薬の新規処方があまり一般的ではないためだと考えられる。⑥ICD-10診断コードによる無症候性高尿酸血症と痛風の区分は、コードの誤記入などによって実際の状況とは異なる可能性がある。
Kurajoh M, et al. Front Pharmacol 2024 ; 15 : 1230562
日内変動
Diurnal Variations
痛風が生じやすい時間帯に関し、17世紀の著名な医師であるThomas Sydenhamは自らも悩まされていた痛風について、次のように記しています1, 6)。
就寝するが、午前2時頃に通常は足の親指に、時にはかかと、ふくらはぎ、あるいは足首に襲いかかる痛みによって目を覚ます。その痛みは骨が脱臼した時の痛みに似ており……その直後に、冷え、震え、そして微熱が現れる……その痛みは……最初は軽度だが……時間とともに次第に激しさを増し……衣服の重みさえも耐えられないほど、また部屋の中を誰かが早足で歩くことで生じる振動さえも耐えられないほど、極めて激しいものとなる。
それでは、近年の痛風・高尿酸血症の日内変動に関する調査では、どのような結果が示されているのでしょうか。
痛風発症の日内変動
痛風発症のオッズ比は、日中(8:00-15:59)に比べて深夜~朝(0:00-7:59)で2.36、夕方~深夜(16:00-23:59)で1.26でした(海外データ)。
12ヵ月以内に痛風発作を経験した米国の痛風患者を対象に、一日を3つの時間帯(深夜~朝:0:00-7:59、日中:8:00-15:59、夕方~深夜:16:00-23:59)に分けて痛風発症の日内変動を検討した結果が報告されています7)。
それによると、「日中」を参照としたときの痛風発症のオッズ比[95%信頼区間]は、「深夜~朝」で2.36 [2.05, 2.73](p<0.0001、条件付きロジスティック回帰)、「夕方~深夜」で1.26[1.07, 1.48](p=0.005、条件付きロジスティック回帰)でした7)。
時間別 痛風発症回数
(海外データ)
【対象】 2003年2月から2012年2月までの9年間の試験期間において、各被験者の1年間の調査期間中に痛風を発症した724例。患者はインターネットで募集し、①医師により痛風と診断、②12ヵ月以内に痛風を発症、③18歳以上、④米国在住、⑤痛風の診断・治療に関する診療録の公開に同意、を適格例とした。痛風の確認は、診療録および/または米国リウマチ学会による痛風の予備分類に記載された特徴のチェックリストに対する主治医の回答により行った。
【方法】 痛風発作に関する記録[発症日、発作部位、臨床症状・徴候(24時間以内の最大疼痛または発赤)、発作治療に使用した痛風治療薬(コルヒチン、非ステロイド性抗炎症薬、全身性コルチコステロイド、関節内コルチコステロイド注射)]を収集し、発症時間ごとの痛風発症回数を集計した。痛風の特定方法は既報と一致しており、患者が自己申告した疼痛·腫脹·熱感等の症状とその重症度、持続時間などについて医師が確認することとした。さらに①最低1種類の痛風治療薬を使用、②足部痛風、③最大の痛みが発症24時間以内、④発赤を伴う、のうちいずれか1つ以上の特徴を持つ患者に限定して、症例定義の堅牢性を評価した。8時間ごとに痛風発症のオッズ比を条件付ロジスティック回帰を用いて算出した。
【Limitations】 ①痛風の発症時刻は自己申告のため、時刻が正確でなく誤分類されている可能性がある。②睡眠時無呼吸症候群が痛風の夜間発症に修飾的な役割を果たした可能性がある。③NSAIDsやコルヒチンの使用時期が痛風のタイミングにどのような影響を及ぼすのか不明である。④参加者の危険因子の分布は米国の痛風患者の無作為サンプルを代表するものではない可能性がある。
Choi HK, et al. Arthritis Rheumatol 2015;67:555-62
血清尿酸値の日内変動
血清尿酸値の日内変動に関する研究において、健康成人における血清尿酸値は朝(8:00-9:00)に比べて夕方(17:00-18:00)で有意に低値でした(男性:p<0.02、女性:p<0.001、対応のあるt検定)
健康成人を対象に、朝(8:00-9:00)と夕方(17:00-18:00)の血清尿酸値(平均値±標準偏差、mg/dL)※を男女別に比較した結果、男女いずれにおいても朝に比べて夕方は有意に低値でした(男性:朝5.82±0.89、夕方5.33±1.06、p<0.02、女性:朝4.47±0.77、夕方3.82±0.79、p<0.001、対応のあるt検定)8)。
※文献ではμmol/L単位で検討されていますが、ここでは尿酸の分子量(168.11)を基にmg/dL単位へ換算した値を記載しました。
血清尿酸値の時間変化
(海外データ)
【対象・方法】 健康成人(対照)19例、糖尿病患者18例、妊婦14例、高齢高血圧患者8例の計59例を対象に、2月から3月までの間の6週間、朝(8:00-9:00)と夕方(17:00-18:00)に採血してそれぞれの血清尿酸値を求め、比較検討した。ここでは健康成人(対照)19例(20~30歳の医学部生、男性11例 / 女性8例)の結果を示した。
Devgun MS, et al. J Clin Pathol 1992;45:110-3
まとめ
季節変動
- 痛風を発症する割合は、季節ごと/月ごとに均一ではありませんでした(海外データ)。
- 血漿中尿酸濃度は、月ごとに均一ではありませんでした(海外データ)。
- 尿酸降下薬の新規処方のリスク比は冬期に対して夏期と秋期で有意に高値でした(p<0.001、 ANOVA)。
日内変動
- 痛風発症のオッズ比は、日中(8:00-15:59)に比べて深夜~朝(0:00-7:59)で2.36、夕方~深夜(16:00-23:59)で1.26でした(海外データ)。
- 健康成人における血清尿酸値は、朝(8:00-9:00)に比べて夕方(17:00-18:00)で有意に低値でした(男性:p<0.02、女性:p<0.001、対応のあるt検定)(海外データ)。
1)Nuki G, et al. Arthritis Res Ther 2006; 8 :S1
2)Hippocrates: The Genuine Works of Hippocrates, vol I and II. Translated and edited by Adams F. New York: Wood; 1886.
3)Choi HJ, et al. J Korean Med Sci 2015 ; 30 : 240-4
4)Åkerblom A, et al. Clin Rheumatol 2017 ; 36 : 1595-8
5)Kurajoh M, et al. Front Pharmacol 2024 ; 15 : 1230562
6)Sydenham T: Tractatus de Podagra et Hydrope. London: G Kettilby; 1683.
7)Choi HK, et al. Arthritis Rheumatol 2015;67:555-62
8)Devgun MS, et al. J Clin Pathol 1992;45:110-3