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心電図クイズ
岩手医科大学 編
意識消失で救急搬送された30代男性
難易度
- 出題:
-
- 岩手医科大学 内科学講座 循環器内科分野 病院診療医
森 皓太郎 先生
- 岩手医科大学 内科学講座 循環器内科分野 病院診療医
- 症 例
- 30歳代,男性
- 主 訴
- 意識消失
- 現病歴
- 夕食後,安静時のアルコール摂取中に突然眼前暗黒感が出現し,意識消失した。家族の呼びかけに反応がなく,呼吸もしていなかったため家族により胸骨圧迫及び人工呼吸が施行され,家族が救急要請した。胸骨圧迫及び人工呼吸開始後5分程度で意識が改善した。救急搬送時の12誘導心電図を図に示す。
- 健診歴
- 毎年健診を受けており,時々心電図異常を指摘されていた。
- 既往歴
- なし
- 家族歴
- 祖母が56歳で突然死している。
- 内服薬
- なし
- 救急隊接触時身体所見
- 直腸温36.7℃,血圧146/81mmHg,心拍数130回/分・不整
- 胸部X線写真
- 心胸郭比40% 胸水や肺うっ血は認めない。
- 心臓超音波検査所見
- 左室駆出率70%,左室壁運動異常や有意な弁膜症は認めない。
- 冠動脈造影検査所見
- 冠動脈に明らかな有意狭窄は認めない。アセチルコリン負荷試験陰性。
家族歴,前胸部誘導のST変化
ブルガタ症候群
解 説
本症例の心電図所見と診断について
ブルガダ症候群は他の器質的心疾患がなく,第2~4で記録した右側胸部誘導(V1~V2)の1誘導以上で自然発生,あるいは負荷試験後にJ点が0.2mV以上のCoved型ST上昇を示し,陰性T波に移行するタイプ1波形が認められる場合に診断される1)。
本症例の心電図所見はV1,V2誘導でCoved型ST上昇と陰性T波を呈したブルガダ心電図のタイプ1であり,他に明らかな器質的心疾患を認めず,ブルガダ症候群と診断される。
本症例は意識消失中の心電図波形がないためその間に致死的不整脈が出現していたことが証明されていないが,タイプ1心電図を認め,原因不明の失神がある場合,電気生理学的検査で右室心尖部,右室流出路から2連刺激を施行し心室頻拍,心室細動の誘発を試みる。突然死予防に有効な治療法は植え込み型除細動器移植術であり,電気生理学的検査の結果も踏まえながら検討する必要がある2)。
本症例では心房細動も合併しているが,ブルガダ症候群患者の約10%に心房細動/心房粗動を合併するとされており3),植え込み型除細動器の不適切作動につながることから心房細動に対する治療も推奨されている。
また過度な飲酒が致死的不整脈の誘因となる可能性も示唆され,複数の国際的エキスパート・コンセンサスでも過剰飲酒の回避が推奨されており4),本症例も飲酒中の意識消失のため,飲酒習慣の指導なども重要となる。
本症例の経過について
電気生理学的検査で右室心尖部からの2連刺激により心室細動が誘発された。後日植え込み型除細動器移植術を施行した。
文献
- 1)Antzelevitch C, et al. J Arrhythm 2016; 32: 315-339.
- 2)日本循環器学会. 遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2026年改訂版)
- 3)Giustetto C, et al. Heart Rhythm 2014; 11: 259-265.
- 4) Wilde AAM, et al. Heart Rhythm 2022; 19: e1-e60.

