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- 岩手医科大学 編 Q2
心電図クイズ
岩手医科大学 編
健診異常で受診した59歳の女性
難易度
- 出題:
-
- 岩手医科大学 内科学講座 循環器内科分野 病院診療医
沼﨑 大諄 先生
- 岩手医科大学 内科学講座 循環器内科分野 病院診療医
- 症 例
- 59歳,女性
- 主 訴
- 健診異常
- 現病歴
- 数年前から健診で心電図異常を指摘されており,精査目的に近医を受診した.明らかな自覚症状は認めなかった.来院時の12誘導心電図を図1に示す。
- 既往歴
- 高血圧
- 家族歴
- 特記事項なし
- 内服薬
- なし
- 身体所見
- 血圧127/71mmHg,脈拍90回/分,不整,身長158cm,体重43kg,下腿浮腫を認めない。
- 胸部聴診
- 心音不整を認める。明らかな心雑音は聴取しない。
- 血液検査
- WBC 4,100/µL,RBC 428×104/µL,Hb 14.0g/dL,Ht 42.3%,Plt 17.2×104/µL,Alb 4.2g/dL,AST 28U/L,ALT 28U/L,
LDH 292U/L,Na 140mEq/L,K 4.3mEq/L,Cl 106mEq/L,NT-proBNP 850pg/mL,TSH 0.87µIU/mL,FT3 2.63pg/mL,FT4 1.11ng/mL
心房細動,軸変化
心房中隔欠損症に伴う右心負荷所見
解 説
本症例の心電図所見と診断について
本症例の心電図では,明らかなP波を認めず,RR間隔は不規則である。したがって,心房細動と診断できる。また,本症例ではQRS軸に注目すると,右軸偏位を示している。右軸偏位は,右室肥大,右室負荷,左脚後枝ブロック,側壁心筋梗塞などで認められることがある。
胸部誘導のR/S移行帯に注目すると,本症例では移行帯が通常より左方へ偏位しており,時計回転を認める。時計回転とは,標準12誘導心電図の胸部誘導V1~V6において,QRS移行帯(R波高がS波深度と同等,またはR/S比が1以上となる誘導)が左方(V5~V6)へ遅れる所見である。通常,移行帯はV3~V4に認められる1)。時計回転は,右室拡大,右室肥大,慢性肺疾患などに伴って認められることがある。本症例では,時計回転も右心負荷を示唆する所見と考えられる2)。
以上より,本症例の心電図診断は,心房細動,右軸偏位,時計回転である。これらを合わせて評価することで,背景に右室負荷を来す病態が存在する可能性を考える必要がある。
成人で心房細動と右室肥大所見を同時に認める場合,肺高血圧症,慢性肺疾患,慢性血栓塞栓性肺高血圧症,弁膜症,先天性心疾患などが鑑別となる。特に,心房中隔欠損症では長期間の左→右短絡により右房・右室の容量負荷が持続し,右房拡大,右室拡大,心房性不整脈をきたすことがある3)。
本症例の経過と治療について
本症例では,心エコー図検査で心房中隔欠損症を認め,右室拡大,右室圧上昇,両心房拡大を伴っていた。心房細動に対してはカテーテルアブレーションを施行したが,その後再発を認めたため,現在はレートコントロールを中心とした治療方針としている。
心房中隔欠損症に対しては,各種検査上閉鎖適応があると判断し,経皮的心房中隔欠損症閉鎖術を施行した。
文献
- 1)Aro AL, et al. Heart Rhythm. 2014; 11: 2254-2260.
- 2)Krintratun S, et al. J Clin Med. 2025; 14: 4750.
- 3)Morton JB, et al. Circulation. 2003; 107: 1775-1782.



