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2026年9月29日公開
〈監修〉植村 和平先生
〈監修〉植村 和平先生
島根大学医学部附属病院 総合診療医センター 助教
2017年自治医科大学卒業。エコー領域において学会発表、講演、執筆など幅広く活動。近年は「エコーのいろは」として、外来診療・在宅医療におけるエコー活用に関する教育・情報発信を行っている。2026年より現職。
はじめに
慢性便秘症の病態評価には、排便造影検査や放射線不透過マーカーを用いた大腸通過時間検査、直腸肛門内圧検査など、さまざまな検査法があります。これらは一定の有用性が示されている一方で、放射線被曝や設備面の制約、手技の煩雑さといった課題もあり、日常診療で広く行われているとは言いにくいのが現状です。こうした背景の中、「便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症」では、便秘エコーの有用性について言及されました※。エコーは非侵襲的かつ簡便で繰り返し検査可能であり、いったん技術を習得すれば医師だけでなく看護師でも活用できます。さらに、ポケットエコーであればベッドサイドや在宅でも使用できる点が特長です。そこで本稿では、便秘エコー初学者がまず押さえておきたいポイントとして、「直腸内に便が貯留しているか」「硬便か軟便か」を判断できるようになることを目標とし、実践動画も交えて解説します(図1)。
※本ガイドラインのCQ 4-2「慢性便秘症の病態機能評価において、体外式超音波検査は有用か?」では、「慢性便秘症の病態機能評価に体外式超音波検査を臨床応用した報告は少ないが、有用である可能性があり、行うことを提案する。」とされており、推奨の強さは「弱」(合意率96%)、エビデンスレベルは「B」となっています1)。
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便秘エコーのキホン
エコー
ゼリー
ゼリー拭き取り用のおしぼり/
ティッシュペーパー など
バスタオル
などの掛物
用意するもの
便秘エコーを行う際は、エコー機器に加えて
右記のものを準備します2,3)。
観察のタイミング
観察は以下の条件で行うことが望ましいとされています。膀胱内の尿は音響窓として働き、直腸の描出を助けます。一方で、食後やガスが多い状態では描出が困難になるため、可能な範囲でタイミングを調整しましょう2,3)。
- 膀胱内に尿が貯留している
- 食事の直後ではない
- 腹部にガスが貯留していない
体位・姿勢
基本的には仰臥位で観察を行います。腹部に過度な緊張がかからないよう、必要に応じて軽度のヘッドアップや膝下にクッションを入れるなどして、リラックスした姿勢をとります。患者にとって無理のない体位で実施することが重要です2,3)。
プローブ走査
一般的に、エコーでは体幹や四肢に対して「横断」と「縦断」の2方向でプローブを走査します。横断走査で描出される画像を横断(短軸)像、縦断走査で描出される画像を縦断(長軸)像と呼びます。下腹部を観察する場合、横断像では画面左側が患者の右側、縦断像では画面左側が患者の頭側に対応することを押さえておきましょう(図2)2,3)。
観察ではまず恥骨上縁にプローブを当て、超音波ビームを尾側に約10~30度傾けることで膀胱を描出します。プローブを当てた状態で、膀胱を音響窓としてその背側に位置する直腸を描出します(図2)2,3)。男性なら前立腺を、女性なら子宮頸部~腟を同定し、その背側にある構造物を直腸と判断します。
直腸における便の観察ポイント
横断(短軸)像では直腸内に便が貯留している場合、内部に半月型の高エコー域が描出されます(図3a)2)。硬便では、音響陰影*を伴う三日月型の高エコー像が描出されます(図3b)2)。一方、軟便の場合は、ある程度超音波の透過性が認められます。また、便貯留やガスがない状態では明らかな高エコー域は認められず、空虚な腸管として全周性の低エコー域が観察されることもあります(図3c)2)。
*強い反射体で超音波の大部分が反射し、それより遠位側には超音波が届かず、その結果、反射体の後方で無エコーまたは低エコーに観察される現象3)
次に縦断(長軸)像では、直腸内の便貯留の位置と量を確認できます。例えば健康成人の排便前後の直腸長軸像において、排便前は上下の直腸の両方に便がみられますが、排便後ではどちらの直腸にも便がないことがわかります(図4)2)。
エコーの手技を
動画でチェック!
腸読クイズ
以下の直腸のエコー所見から、便の状態として考えられるものはどれでしょう?
以下の直腸のエコー所見から、便の状態として考えられるものはどれでしょう?
以下の直腸のエコー所見から、便の状態として考えられるものはどれでしょう?
便秘エコーの活用症例
日常診療で注意すべき病態の一つとして糞便塞栓が挙げられます。糞便塞栓はとくに高齢者において罹患率が高く、死亡率や医療費増加の一因となる可能性も報告されているため、迅速な評価と対応が求められます4)。
ここでは、糞便塞栓の診断および治療効果の評価にポケットエコーを活用した症例をご紹介します5)。本症例は、慢性便秘症の既往を有する70歳男性で、3~4日間の腹部膨満感と便秘があり、腹痛のために救急搬送されました。来院時には腹部膨満を認める一方で、発熱・腹膜刺激症状・明らかな消化管出血はなく、直腸診では硬便の貯留が確認されました。
初回のエコー検査では直腸内に音響陰影を伴う高エコー像がみられ、硬便の存在を示唆する所見が認められました(図5a)。加えて、約46mmまで拡張した直腸径(図5b)とともに、S状結腸における固形便と液状便の境界がみられ(図5c)、さらに上行結腸まで及ぶ近位側結腸の拡張が認められました(図5d)。これらの所見の組み合わせから、単なる便秘ではなく糞便塞栓に伴う腸閉塞が考えられ、治療介入に至りました。
治療5日後のエコー所見では、直腸内腔の虚脱に伴い、これまで描出されにくかった直腸壁の層状構造が明瞭に確認できるようになりました(図6a)。また、初診時には約46mmであった直腸径が、約22mmまで縮小したことがわかりました(図6b)。
本稿では便秘診療におけるエコー活用の意義や、基本的な手技を中心に概説しました。便秘症状に関して患者から相談を受けた際に、例えば「直腸に硬便が貯留していることがエコーでわかるので、摘便を行いましょう」といった客観的評価を患者に示すことで、治療方針に対する納得感を高めることが期待されます。また、排便ケアに関する知識と技術を有する看護師との共通言語としての有用性も感じており、多職種連携の質の向上にも寄与すると考えられます。
便秘エコーは今後さらなる発展が期待される分野の一つです。本稿をご覧いただいた先生方におかれましても、ぜひ明日からの便秘診療でエコーを活用し、腸の中を読んでみてはいかがでしょうか。
出典
1) 日本消化管学会(編) : 便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症. 南江堂, 東京, 2023
2) Matsumoto M et al. Diagnostics (Basel). 2022; 12(2): 300.
3) 一般社団法人 日本創傷・オストミー・失禁管理学会、看護理工学会(編):エコーによる直腸便貯留観察ベストプラクティス. 照林社, 東京, 2021
4) Hussain ZH, Whitehead DA, Lacy BE. Curr Gastroenterol Rep. 2014; 16(9): 404.
5) Uemura W et al. Cureus. 2026; 18(1): e100552.
※本コンテンツは便秘症診療における超音波検査の活用に関する医学・学術情報を提供するものであり、診療報酬の算定を目的としたものではありません。算定の可否については各施設の判断のもと、最新の関係法規・通知等をご確認ください。
2026年9月作成
18279-1
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