- 医療関係者向けホーム
- 循環器領域
- ユリス®錠
- Pick Up
- 選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)としてのユリス®錠の作用機序<前編>
Pick Up
2020年10月16日公開(2022年03月01日一部改訂)
2020年5月、痛風、高尿酸血症に適応を有する高尿酸血症治療薬「ユリス®錠」が登場しました。
ユリス®錠は、尿酸トランスポーターの1つであるURAT1を選択的に阻害することで、
尿酸の再吸収を抑える選択的尿酸再吸収阻害薬(Selective Urate Reabsorption Inhibitor:SURI)です。
今回は、尿酸コントロール機構における尿酸トランスポーターの働き、及び高尿酸血症の背景の1つとして近年明らかになってきた「尿酸の再吸収が亢進している病態」について、ご紹介します。


尿酸コントロール機構
体内には、さまざまな尿酸トランスポーターがあり
尿酸の「再吸収」と「分泌」のバランスが保たれています。
- 1)Sica DA, et al. The Kidney 6th ed. 2000 ; 680-700
- 2)Ichida K, et al. Nat Commun 2012 ; 3 : 764
- 3)Enomoto A, et al. Nature 2002 ; 417 : 447-52
- 4)Matsuo H, et al. Sci Transl Med 2009 ; 1 : 5ra11
- 5)Hosoyamada M, et al. Am J Physiol 1999 ; 276 : F122-8
- 6)木村弘章, 他 痛風と核酸代謝 2000 ; 24 : 115-21
尿酸の再吸収が亢進している病態
高尿酸血症の病態の背景には、「尿酸の再吸収亢進」があることが
近年の研究で明らかになってきました。
〈正常な尿酸排泄と尿酸再吸収亢進状態〉
正常な尿酸排泄においては、尿酸は糸球体で100%ろ過された後、近位尿細管に運ばれます。
近位尿細管では尿酸トランスポーターを介して「再吸収」と「分泌」の両方が行われています。そして、最終的に尿中に排泄される尿酸は、糸球体でろ過された尿酸の10%程度に過ぎません。
〈高尿酸血症の要因の1つとしてのインスリン抵抗性〉
インスリン抵抗性を背景に有する患者においては、
インスリンによりURAT1を介した尿酸の再吸収が亢進する結果、
血中尿酸が増加し、高尿酸血症の病態をきたす可能性が考えられます。
[監修コメント]
市田 公美先生(東京薬科大学 薬学部 病態生理学教室 教授)
近年の多くの研究成果により、尿酸の排泄にかかわる「尿酸トランスポーター」に関するさまざまなことが明らかになってきました。腎臓の近位尿細管においては、主にURAT1が尿酸を尿中から血中へ「再吸収」する役割を担い、ABCG2、OAT1、OAT3が尿酸を血中から尿中に「分泌」する役割を担っていると考えられます。また腸管においても、ABCG2は尿酸を血中から糞中に「分泌」する役割を担っています。2020年5月に発売となったユリス®錠(ドチヌラド)は、URAT1選択性が高いため、ABCG2、OAT1、OAT3を介した尿酸分泌経路は阻害せず、URAT1を介した尿酸再吸収経路を阻害する、選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)です。後編では、このドチヌラドの作用機序について、詳しくご紹介します。ぜひ、ご期待ください。