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- ユリス®錠の選択的尿酸再吸収阻害作用と臨床的有用性
Pick Up
2021年03月30日公開(2022年03月01日一部改訂)
ユリス®錠(ドチヌラド)は、URAT1選択性が高く、
ABCG2、OAT1、OAT3を介した尿酸分泌経路は阻害せず、URAT1を介した再吸収経路を阻害する
選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)です。
ドチヌラドの作用(概念図)
腎臓の近位尿細管において尿酸輸送はトランスポーターを介して行われ、再吸収にはURAT11)が、分泌には
ABCG22)、OAT13)、OAT34)等が関与しています。また腸管では、尿酸はABCG2を介して糞中に分泌されます5)。
ドチヌラドはURAT1選択性が高く、ABCG2、OAT1、OAT3を介した尿酸分泌経路は阻害せず、URAT1を介した再吸収経路を阻害する選択的尿酸再吸収阻害薬(SURI)です6,7)。
ドチヌラド及びその他の尿酸排泄促進薬のURAT1阻害比(ヒトABCG2、OAT1、OAT3発現細胞、in vitro)6,7)
- 1)Enomoto A, et al. Nature 2002;417:447-52
- 2)Woodward OM, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2009;106:10338-42
- 3)Hosoyamada M, et al. Am J Physiol 1999;276:F122-8
- 4)木村弘章,他痛風と核酸代謝2000;24:115-21
- 5)Matsuo H, et al. Sci Transl Med 2009;1:5ra11
- 6)社内資料:ヒトABCG2、OAT1及びOAT3発現細胞を用いた尿酸取り込み阻害試験(2020年1月23日承認、CTD 2.6.2.2)
- 7)Taniguchi T, et al. J Pharmacol Exp Ther 2019;371 : 162-70
[利益相反]本文献の著者のうち8名は株式会社富士薬品、2名は持田製薬株式会社の社員である。
「禁忌を含む使用上の注意」等は製品情報(DI)をご参照ください。
後期第Ⅱ相試験は一部承認外の成績が含まれますが、用量反応検証試験として実施されたため掲載します。
ユリス®錠の血清尿酸値低下作用[後期第Ⅱ相試験(用量反応検証試験)]
- 社内資料:用量反応検証試験・後期第Ⅱ相臨床試験[2020年1月23日承認、CTD 2.7.6.14、CSR FYU-981-006(資料 5.3.5.1-2)]
〔承認時評価資料〕Hosoya T, et al. Clin Exp Nephrol 2020; 24: S53-61 - [利益相反]本研究は株式会社富士薬品の資金により行われた。本論文の著者のうち4名は株式会社富士薬品の社員である。
著者には、本研究に関する株式会社富士薬品のアドバイザーでありコンサルタント料等を受領している者が含まれる。
後期第Ⅱ相試験(用量反応検証試験)の試験概要
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【 目 的 】
痛風を含む高尿酸血症患者を対象として、ドチヌラドの用量反応性の検証及び安全性の検討を行う。
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【試験デザイン】
多施設共同、二重盲検、ランダム化、プラセボ対照、用量漸増並行群間比較試験
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【 対 象 】
20歳以上の痛風を含む高尿酸血症患者※1(割付症例数:201、投与症例数:200)
[血清尿酸値:痛風患者7.0mg/dL以上、高尿酸血症患者(合併症※2あり)8.0mg/dL以上、高尿酸血症患者(合併症※2なし)9.0mg/dL以上]※1「尿酸産生過剰型」あるいは「判定不能」を除く
※2 高血圧、糖尿病、メタボリックシンドローム -
【 方 法 】
対象患者をドチヌラド4用量群(0.5mg群、1mg群、2mg群、4mg群)又はプラセボ群の計5群にランダムに割り付け、治験薬を1日1回朝食後に経口投与した。ドチヌラド4用量群は0.25mg/日を投与開始から2週後まで2週間投与した後、0.5mg/日に増量して3週目から4週後まで2週間投与し、さらに0.5mg/日、1mg/日、2mg/日、4mg/日のいずれかに維持又は増量して5週目から12週後まで8週間投与した。
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【 評価項目 】
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有効性に関する評価項目
- [主要評価項目] 投与終了時(投与12週後又は投与中止時)における投与前値からの血清尿酸値
低下率[(投与前値−投与終了時の値)/投与前値×100] - [副次評価項目] 投与終了時における血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率[血清尿酸値が6.0mg/dL以下の例数/有効性評価対象例数×100]など
- [主要評価項目] 投与終了時(投与12週後又は投与中止時)における投与前値からの血清尿酸値
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安全性に関する評価項目
有害事象、副作用、痛風関節炎など
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【 解析計画 】
主要評価項目について、投与終了時の血清尿酸値低下率は、Jonckheere-Terpstra検定を用いた用量反応性の検証(主解析)及びTukey-Kramer検定を用いた群間比較を行った。副次評価項目について、血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率は、投与終了時におけるCochran-Armitage検定を用いた用量反応性の検討を行った。
投与終了時の血清尿酸値低下率(主要評価項目、FAS解析対象、LOCF)
ドチヌラド0.5mg群~4mg群において、
投与終了時の血清尿酸値低下率に用量反応性が検証されました。
投与終了時における投与前値からの血清尿酸値低下率(平均値±標準偏差)は、プラセボ群で−2.83±8.19%、ドチヌラド0.5mg群で21.81±11.35%、1mg群で33.77±9.82%、2mg群で42.66±13.16%、4mg群で61.09±8.75%であり、ドチヌラドの用量反応性が検証されました([主解析]p<0.001、Jonckheere-Terpstra検定)。また、群間比較では、いずれの群間においても有意差が認められました(ドチヌラド1mg群vs. 2mg群:p=0.002、その他の群間:p<0.001、Tukey-Kramer検定)。
投与終了時の血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率(副次評価項目、FAS解析対象、LOCF)
投与終了時の血清尿酸値6.0mg/dL以下の達成率は、プラセボ群で0.0%、ドチヌラド0.5mg群で23.1%、1mg群で65.9%、2mg群で74.4%、4mg群で100.0%であり、ドチヌラドの用量反応性が認められました。
安全性(SP解析対象)注)
痛風関節炎を除く副作用(臨床検査値異常を含む)及び痛風関節炎の副作用は、プラセボ群で15.4%及び0.0%、
ドチヌラド0.5mg群で12.5%及び2.5%、1mg群で14.3%及び4.8%、2mg群で15.4%及び7.7%、4mg群で10.0%及び7.5%に認められました。
痛風関節炎を除く副作用(臨床検査値異常を含む)は、プラセボ群で6/39例(15.4%)、ドチヌラド0.5mg群で5/40例(12.5%)、1mg群で6/42例(14.3%)、2mg群で6/39例(15.4%)、4mg群で4/40例(10.0%)に認められました。2例以上に発現した副作用は、プラセボ群で尿中β2ミクログロブリン増加が2/39例(5.1%)、ドチヌラド1mg群でβ–NアセチルDグルコサミニダーゼ増加が3/42例(7.1%)、2mg群で尿中β2ミクログロブリン増加、β–NアセチルDグルコサミニダーゼ増加、白血球数増加がそれぞれ2/39例(5.1%)、4mg群で尿中β2ミクログロブリン増加、β–NアセチルDグルコサミニダーゼ増加、α1ミクログロブリン増加がそれぞれ2/40例(5.0%)に認められました。ドチヌラド0.5mg群でみられた副作用は、四肢不快感、γ–グルタミルトランスフェラーゼ増加等でいずれも1/40例(2.5%)に認められました。本試験において、死亡例を含む重篤な副作用は認められませんでした。また本試験において投与中止に至った痛風関節炎を除く副作用は、プラセボ群で尿中β2ミクログロブリン増加が1例に認められました。痛風関節炎の副作用は、ドチヌラド0.5mg群で1/40例(2.5%)、1mg群で2/42例(4.8%)、2mg群で3/39例(7.7%)及び4mg群で3/40例(7.5%)に認められました。プラセボ群では痛風関節炎の副作用は認められませんでした。本試験において投与中止に至った痛風関節炎の副作用は、1mg群で1例に認められました。
- 注)本薬の薬理効果により血清尿酸値の急激な変動に伴い痛風関節炎が誘発される可能性があることから、痛風関節炎に関しては他の有害事象と別集計とした。
- 【FAS解析対象】:
治験薬を1回以上投与され、有効性に関する評価項目が投与後に1項目でも測定された症例 - 【LOCF】:
欠測データを最後に観察した値に置き換えて補完する - 【SP解析対象】:
治験薬を1回以上投与され、投与後に安全性の評価が可能な情報が得られている症例
【用法及び用量】
通常、成人にはドチヌラドとして1日0.5mgより開始し、1日1回経口投与する。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量する。維持量は通常1日1回2mgで、患者の状態に応じて適宜増減するが、最大投与量は1日1回4mgとする。