高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版では、高尿酸血症患者さんの尿路結石の危険因子として、①水分摂取不足による尿量低下、②持続する酸性尿、③尿中尿酸排泄量の増加の3つが挙げられています1)。
このうち③尿中尿酸排泄量の増加については、高尿酸尿症(1日の尿中尿酸排泄量が、男性800mg以上、女性750mg以上)が尿路結石の発生リスクを増加させることや、尿酸排泄促進薬が尿中尿酸排泄量の増加により尿酸結石の形成を促進させることが記載されています1)。
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2024年07月09日公開


CONTENTS
高尿酸血症患者さんにおける尿路結石の危険因子は?
これらの危険因子の対処法は?
①の「尿量低下」に対しては飲水、②の「酸性尿」に対しては尿アルカリ化が主な対処法です。 ③の「尿中尿酸排泄量の増加」については、尿酸降下薬のうち、尿酸排泄促進作用が示唆されている、ユリスの電子添文が参考になります。
禁忌ではなく、「特定の背景を有する患者に関する注意」の項ですが、尿路結石を伴う患者さんに対しては 「治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。」と記載されています2)。
なおユリスの治験では、被験者を選択する際に腹部超音波検査又は腹部単純X線検査を全例に行い、尿路結石の画像所見が認められる場合は対象から除外されています。つまり、治験では尿路結石を伴う患者さんへの投与は行われていません。
「禁忌を含む注意事項等情報」等は電子添文をご参照ください。
尿酸降下薬の尿路結石関連の副作用発現状況を教えてください。
尿酸排泄促進作用が示唆されているユリスの、治験時と市販直後調査における尿路結石関連の副作用発現状況を見てみましょう。
治験時(承認時までの臨床試験成績の集計)
531例中、尿路結石関連の副作用は、腎結石症が5例、腎石灰沈着症が2例、計7例(1.3%)に報告されています。これらの副作用は、いずれも腹部超音波検査や腹部単純X線検査などの画像所見で確認された無痛性のものであり、患者さんに自覚症状がなくても副作用として認められたものです。
なお、電子添文に記載されているように、尿路結石を伴う患者さんには原則的に投与しないよう、注意する必要があります。
市販直後調査(発売後6ヵ月間)
調査対象5,326施設において、推定患者数約58,400人にユリスが投与されました。78例96件の副作用が収集され、そのうち重篤な副作用は、「高脂血症」「肝機能異常」がそれぞれ1件、同一症例で報告されました3)。 副作用発現状況の詳細はスライドをご覧ください。
市販直後調査は、治験よりも実臨床に近い条件で行われた調査結果なので、私たちが普段の診療でユリスを使った時に生じやすい副作用に近いかもしれません。
尿中尿酸排泄量に対するユリスの影響は?
電子添文やガイドラインでの記載
ユリスの電子添文では、「本剤の薬理作用により特に投与初期に尿酸排泄量が増大する」と記載されていますし、尿酸排泄量増大により生じうる尿路結石やその対処法についても触れられています2)。
また、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版2022年追補版』の「尿路結石」の項では、 「ドチヌラドの投与早期においては、尿中尿酸排泄量の増加がみられるものの、血清尿酸値の下降とともにやがて基準域内に達するものと考えられている。」と記載されています4)。ただし、電子添文と同様に、原則として「尿路結石合併例には投与しないと考えるべき」とされている点には注意が必要です。
臨床試験データ
このような電子添文やガイドラインの記載の根拠となった、ユリスの2つの臨床試験データをご紹介します。
1. 第Ⅱ相試験(臨床薬理試験:入院管理下、7日間反復投与)
5)社内資料:病型別薬力学試験・第Ⅱ相試験(2020年1月23日承認、CTD 2.7.6.11)〔承認時評価資料〕
6)Okui D, et al. Clin Exp Nephrol 2020 ; 24 : S92-102[利益相反]本研究は株式会社富士薬品の資金により行われた。本論文の著者は全員株式会社富士薬品の社員である。
まず、入院管理下でユリスを7日間反復投与した際の、病型別尿中尿酸排泄量の推移です。
例えば尿酸排泄低下型群2の尿中尿酸排泄量の平均値は、初回投与前日516.25mg、投与1日目1,132.30mg、投与2日目882.17mgでした5,6)。また、投与終了1日後となる投与8日目では439.25mgでした5,6)。
ただし本試験は入院管理下で行われており、食事が厳格にコントロールされていました。
2. 第Ⅰ相試験(臨床薬理試験:外来管理下、14週間反復投与)
7)社内資料:病型別薬力学試験・第Ⅰ相試験(2020年1月23日承認、CTD 2.7.6.12)〔承認時評価資料〕
8)Hosoya T, et al. Clin Exp Nephrol 2020 ; 24 : S103-11[利益相反]本研究は持田製薬株式会社及び株式会社富士薬品の資金により行われた。本論文の著者のうち2名は持田製薬株式会社の社員である。著者には、本研究に関する株式会社富士薬品のアドバイザーでありコンサルタント料等を受領している者が含まれる。
そこで、より実臨床に近い、外来管理下という条件でユリスを14週間投与した際の、病型別尿中尿酸排泄量の推移もご紹介します。この試験では、ユリスの投与開始時や漸増時に、その前日、当日、翌日の3日間、それぞれ24時間蓄尿を行って尿中尿酸排泄量を測定しました。
その結果、例えば尿酸排泄低下型群では、ユリス投与前の尿中尿酸排泄量の平均値は、ユリス投与前日609.58mg、投与当日864.21mg、投与翌日788.88mgでした7,8)。
6. 用法及び用量
通常、成人にはドチヌラドとして1日0.5mgより開始し、1日1回経口投与する。その後は血中尿酸値を確認しながら必要に応じて徐々に増量する。維持量は通常1日1回2mgで、患者の状態に応じて適宜増減するが、最大投与量は1日1回4mgとする。
8. 重要な基本的注意(抜粋)
8.2 本剤の薬理作用により特に投与初期に尿酸排泄量が増大することから、尿が酸性の場合には、患者に尿路結石及びこれに由来する血尿、腎仙痛等の症状を起こす可能性があるので、これを防止するため、水分の摂取による尿量の増加及び尿のアルカリ化をはかること。なお、この場合には、患者の酸・塩基平衡に注意すること。
9. 特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
9.1 合併症・既往歴等のある患者 9.1.1 尿路結石を伴う患者
治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。本剤の薬理作用から、尿中尿酸排泄量の増大により、尿路結石の症状を悪化させるおそれがある。
なお、臨床試験では、尿路結石を伴う患者への投与は行われていない。
尿酸降下薬を選択する際には、
それぞれの薬剤の薬理学的特徴を知っておく必要がありますね。
そうですね。高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版2022年追補版では、尿酸降下薬の薬理学的特徴に関する項が設けられていて、例えばユリスについては「腸管においてABCG2を阻害しないため腎負荷を回避する尿酸排泄促進薬と考えられる。」と記載されています9)。
まとめ
- 高尿酸血症患者さんの尿路結石の危険因子として、①水分摂取不足による尿量低下、②持続する酸性尿、③尿中尿酸排泄量の増加の3つがあります1)。
- 尿酸排泄促進作用が示されているユリスの電子添文では、禁忌ではなく、「特定の背景を有する患者に関する注意」の項において、尿路結石を伴う患者さんに対しては 「治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しないこと。」と記載されています2)。
- ユリスの尿路結石関連の副作用は、治験時データでは腎結石症が5例、腎石灰沈着症が2例、計7例(1.3%)に報告されました(いずれも画像所見による無痛性のもの)。
- ユリス投与による尿中尿酸排泄量への影響については、入院管理下及び外来管理下で病型別に尿中尿酸排泄量を検討した2つの臨床試験が報告されています5-8)。

1)日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改訂委員会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 診断と治療社 2018 : 81-3
2)ユリス®錠 電子添文[2022年11月改訂(第5版)]
3)ユリス®錠 市販直後調査期間中の副作用最終集計結果のご報告
4)日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改訂委員会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 2022年追補版 診断と治療社 2022:36-8
5)社内資料:病型別薬力学試験 第Ⅱ相試験 (2020年1月23日承認 CTD 2.7.6.11) (承認時評価資料)
6)Okui D, et al. Clin Exp Nephrol 2020;24:S92-102
7)社内資料 病型別薬力学試験 第Ⅰ相試験 (2020年1月23日承認、 CTD 2.7.6.12) (承認時評価資料)
8)Hosoya T. et al. Clin Exp Nephrol 2020;24:S103-11
9)日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン改訂委員会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版 2022年追補版 診断と治療社 2022:18-23