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心電図クイズ

東京大学 編

失神を来したファロー四徴症術後の48歳男性

難易度

出題:
  • 東京大学医学部附属病院 循環器内科 助教 
    相馬 桂 先生
症 例
48歳,男性
主 訴
動悸,意識消失
現病歴
出生時よりチアノーゼを認め,ファロー四徴症(TOF)と診断。2歳時に左original BTシャント術,5歳時にTOF心内修復術を施行された。術後は根治したので過度な運動を避ければよいと説明され,高校生以降は経過観察終了となっていた。就職後の健診で心雑音を指摘されるも,自覚症状がないため受診はしていなかった。X-1週間の休憩中に動悸があり,その直後に意識消失を来した。X-3日の事務作業中にも同様の動悸と直後の意識消失を認めたが,いずれもすぐに意識回復したので救急要請はしなかった。X日に近医を受診し,精査加療目的で当院紹介受診となった。来院時の12誘導心電図を図1に示す。
家族歴
なし
内服薬
なし
生活歴
喫煙(current smoker 20本/日×約30年),飲酒(機会飲酒)
身体所見
身長159.2cm,体重59.9kg,血圧114/74mmHg,脈拍83回/分
胸部聴診
胸骨左縁第2肋間でLevine 度の拡張期雑音聴取,呼吸音正常
血液検査
WBC 7,800/μL,Hb 15.5g/dL,Plt 27.8×104/μL,BUN 11.6mg/dL,Cre 0.55mg/dL,AST 51IU/L,ALT 1,051IU/L,LDH 250IU/L,
Na 137mEq/L,K 4.3mEq/L,Cl 104mEq/L,BNP 82.3pg/mL
胸部X線写真
心胸郭比62%,右室・肺動脈拡張,軽度肺うっ血

図1.来院時12誘導心電図

手術歴,心雑音,QRS幅

TOF術後の肺動脈弁逆流による右室拡大とそれに伴う心室頻拍

解 説

本症例の心電図所見と診断について

来院時の心電図は洞調律,完全右脚ブロックであり,QRS幅は192msecと延長していた。TOF心内修復術後の患者であり,拡張期雑音が聴取されたことからTOF術後遠隔期の合併症である肺動脈弁閉鎖不全(肺動脈弁逆流)の存在が疑われた。

TOFはチアノーゼ性先天性心疾患の中で最も頻度が高く,肺動脈狭窄,心室中隔欠損,大動脈騎乗,右室肥大を特徴とする。標準治療は幼少期に行われる心内修復術(右室流出路拡大+心室中隔欠損閉鎖)であり,術後はQOLと長期予後が大きく改善する。しかし心内修復術は根治術ではなく,遠隔期に合併症や遺残症から心不全や頻脈性不整脈を呈するリスクが高いので定期的な経過観察が必要である。

TOF術後の心電図は,完全右脚ブロックになることが多い。術後遠隔期には右室の拡大とともに経年的にQRS幅が広がる。QRS幅が1msec拡大するごとに心室頻拍発生率が上昇するとの報告もある1)また,TOF術後の突然死の危険因子として,重度の肺動脈弁逆流や肺動脈狭窄による右室機能低下,ホルター心電図や電気生理学的検査(EPS)で誘発される心室頻拍の既往,左室機能低下,QRS幅180msec以上などが挙げられる2)本症例では心エコー図検査で重度の肺動脈弁逆流と右室の拡大,右室機能低下を認めた。ホルター心電図では非持続性心室頻拍を認め,TOF術後の重度肺動脈弁逆流による右室拡大とそれに伴う心室頻拍による意識消失と診断した。

本症例の経過と治療について

肺動脈弁逆流に対する再手術の必要性を評価するため,心臓MRI検査,心臓カテーテル検査,EPSを行った。MRI検査では右室拡張末期容積係数154mL/m²,右室駆出率42%,肺動脈弁逆流率58%と高度肺動脈弁逆流および右室拡大を認めた(図2)。左室の収縮能は保たれていた。カテ―テル検査では,冠動脈有意狭窄および肺高血圧症は認めず,肺動脈狭窄も認めなかった。EPSでは右室流出路起源の心室頻拍が誘発され,同部位に対してアブレーション治療を行った。

心室頻拍に重度肺動脈弁逆流,右室拡大を伴う場合,突然死に至る場合がある。TOF術後遠隔期の頻脈性不整脈は遺残病変や合併症が原因であることが多く,不整脈に対する介入のみでなく,再手術も念頭に置いて検査を行う必要がある。右室容積や右室機能,肺動脈弁逆流の定量的評価方法としてはMRIが優れている。右室拡張末期容積が160mL/m²程度であれば肺動脈弁置換術後に右室容積が正常化する可能性があるため,機能が著明に低下する前の手術が望まれる3)

本症例は右室拡大,肺動脈弁逆流,心室頻拍から肺動脈弁置換術の適応であり,肺動脈弁置換術を施行した。手術時にはEPSにて低電位領域だった肺動脈弁下と周囲の心筋を切除した。このように不整脈基質を除去することで不整脈発生頻度は0~10%程度に減少する。今後は心筋保護薬を漸増後,再度EPSを行い,植え込み型除細動器の適応を検討する4)

文献
  1. 1)Possner M, et al. Can J Cardiol 2020; 36: 1815-25.
  2. 2)日本循環器学会.成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版).
  3. 3)Baumgartner H, et al. Eur Heart J 2021; 42: 563-645.
  4. 4)日本循環器学会.不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版).

図2.心臓MRI

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