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開発の経緯
潰瘍性大腸炎は直腸及び結腸の炎症を特徴とする慢性疾患であり、「大腸粘膜を直腸側から連続性におかし、しばしばびらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性炎症である」と定義される※1。特徴的な症状としては持続性又は反復性の、下血を伴うことのある下痢、血便及び腹痛である。また、直腸と結腸の機能障害により、便意を強く感じるために生じる便意切迫感〔排便に対する切迫感(突然又は即時の必要性)〕や便失禁、及びしぶり腹(便意を感じても排便がない状態)なども認められる※2。潰瘍性大腸炎の病期は、活動期(血便が出現し、内視鏡的には血管透見像の消失、易出血性、びらん又は潰瘍などを認める状態)と寛解期(血便が消失し、内視鏡的には活動期の所見が消失し、血管透見像が出現した状態)の2つに分類され※3、多くの潰瘍性大腸炎患者は、寛解と再燃を繰り返す。中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者における治療選択肢は近年増加したが、いまだ既存治療が効果不十分で日常生活に困っている患者が存在し、新しい作用機序を有する薬剤も必要とされてきた。
オンボー®〔一般名:ミリキズマブ(遺伝子組換え)(以下、本剤)〕は、インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットに結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である。
IL-23はIL-12ファミリーに属する大腸粘膜の炎症に関与するサイトカインで、IL-23に特有のサブユニットであるp19と、IL-12と共通のサブユニットであるp40からなる。IL-12は抗腫瘍免疫を誘導すること、及び細菌やウイルスによる感染の防御に重要な役割を果たしていることが示唆されている※4、※5。したがって、IL-23のp19サブユニットのみを標的とすることで、IL-12による防御機能の維持が期待される※6、※7。本剤は、IL-12には結合せずIL-23p19サブユニットに特異的に結合し、IL-23受容体との相互作用を阻害する※8。
本邦では、日本を含む国際共同第Ⅲ相試験〔LUCENT-1(AMAN)試験:12週間の寛解導入試験、LUCENT-2(AMBG)試験:40週間の維持試験、長期継続投与試験であるLUCENT-3(AMAP)試験〕において中等症から重症の潰瘍性大腸炎に対する本剤の有効性及び安全性を検討した結果に基づき、2023年3月に、点滴静注300mg、皮下注100mgオートインジェクター、及び皮下注100mgシリンジの3製剤について、以下の効能又は効果にて承認された。
オンボー®点滴静注300mg:
中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
オンボー®皮下注100mgオートインジェクター/オンボー®皮下注100mgシリンジ:
中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)
自己投与については、2024年6月より在宅自己注射指導管理料の対象薬剤となりました。
- ※1日本消化器病学会 編:炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020(改訂第2版). 南江堂, 2020
- ※2日比紀文, 久松理一.:IBDを日常診療で診る 炎症性腸疾患を疑うべき症状と、患者にあわせた治療法. 羊土社, 2017
- ※3厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)
令和4年度分担研究報告書. 潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針(令和4年度 改訂版) 、2023 - ※4Hamza, T. et al.:Int J Mol Sci., 11(3), 789(2010)
- ※5Tugues, S. et al.:Cell Death Differ., 22(2), 237(2015)
- ※6 Kurtz, S. L. et al.:PLoS One., 9(10), e109898(2014)
- ※7Teng, M. W. L. et al.:Nat Med., 21(7), 719(2015)
- ※8社内資料:ミリキズマブの薬理試験