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Information
開発の経緯
肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、肺動脈圧の上昇を認める病態の総称であり、共通した発症原因は現在においても明らかにされていません。肺動脈圧上昇の機序として、血管中膜平滑筋の肥大による肺動脈血管の収縮・攣縮、肺動脈血管内膜の増殖による有効肺血管床の減少及び肺動脈における微小血栓形成が考えられています。
PAH治療薬としては肺血管内皮障害に関わる経路に作用点を持つプロスタサイクリン製剤、ホスホジエステラーゼ5阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬などが用いられています。
トレプロスト®注射液(一般名:トレプロスチニル)は、プロスタサイクリン誘導体であり、プロスタサイクリンの化学構造を改変することにより、消失半減期及び室温下での溶液安定性を改善した、静脈内投与及び皮下投与が可能な注射剤です。トレプロスチニルの主な薬理学的作用は、肺及び全身の動脈血管床に対する直接的な血管拡張作用と、血小板凝集抑制作用です。
本剤は、米国United Therapeutics社が1996年に開発に着手し、米国においてNYHA心機能分類Ⅱ~Ⅳ度のPAH治療薬として2002年に持続皮下投与、2004年に持続静脈内投与が承認され、2006年には既存の合成プロスタサイクリン注射剤(エポプロステノール)から本剤への切替えに伴う用法・用量が承認されました。欧州では、フランスを審査調整国とする相互認証方式により申請し、NYHA心機能分類Ⅲ度の原発性肺高血圧症(PPH)治療薬として2005年に持続皮下投与、2011年に持続静脈内投与が承認され、ドイツ等の関係加盟国20余ヵ国で承認されています。
2013年9月時点で、持続静脈内投与は33ヵ国、持続皮下投与は39ヵ国で承認され、エポプロステノールから本剤への切替えは米国で承認されています。
持田製薬株式会社は、本剤が静脈内投与又は皮下投与が可能なプロスタサイクリン注射剤で、かつ溶解が不要な液剤であることから、治療継続が容易に行える薬剤になると判断し、2008年より国内での臨床試験を開始しました。国内第Ⅱ/Ⅲ相追加試験において、本剤を12週間投与した結果、6分間歩行距離及び肺血管抵抗係数の改善が認められ、また、本剤の有効性、安全性及び薬物動態について、国内外の臨床試験の結果に大きな相違がなかったことから、海外で実施した臨床試験を申請資料として利用することが可能と判断されました。
以上より、PAH(WHO機能分類クラスⅡ、Ⅲ及びⅣ)に対する本剤の有効性及び安全性が確認されたことから、臨床現場にPAH治療の新たな選択肢を提供できると考え、製造販売承認申請を行い、2014年3月に製造販売承認を取得しました。
- PAH:Pulmonary Arterial Hypertension:肺動脈性肺高血圧症
- PPH:Primary Pulmonary Hypertension:原発性肺高血圧症(2009年10月より肺動脈性肺高血圧症:PAHに疾患概念が拡大して再指定された)
- 注)本邦で承認された効能又は効果は、肺動脈性肺高血圧症(WHO機能分類クラスⅡ、Ⅲ及びⅣ)です。