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開発の経緯
潰瘍性大腸炎は、大腸に発症する慢性炎症性腸疾患であり、「主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症である」と定義されています1)。潰瘍性大腸炎の主症状は粘血便、下痢、腹痛、軟便などですが、主症状以外にも腸管合併症や腸管外合併症を伴うことがあります。多くの場合、症状の増悪・再燃(活動期)と無症状期間(寛解期)が断続的に繰り返され、生涯続く慢性疾患であることから、患者の生活の質(QOL)に重大な影響を及ぼし、患者にとって罹患による負担が大きい疾患でもあります2)。
現在、潰瘍性大腸炎に対する根治的な薬物療法は存在せず、本疾患の治療では寛解の導入と維持、QOLの改善、合併症の抑制が目的となります3)、4)。軽症~中等症の活動期潰瘍性大腸炎の寛解導入における薬物療法では、主として重症度と罹患範囲に応じて薬剤を選択します1)。
軽症~中等症の潰瘍性大腸炎の活動期薬物療法において、「副腎皮質ステロイド」(以降、ステロイド)は重要な一翼を担っており※1、最近では潰瘍性大腸炎の標的部位である“大腸”に限定して作用するように設計されたステロイドも選択肢の1つとして注目されつつあります1)、5)、6)。
コレチメント®錠9mg(以降、本剤)は、有効成分としてブデソニドを含有し、「MMXテクノロジー」(Multi Matrix System)と呼ばれる薬物送達技術を用いた、ブデソニドの経口DDS(Drug Delivery System)製剤です。本剤は、ブデソニドを親水性基剤および親油性基剤からなるマトリックス中に分散させた素錠部に、pH応答性の高分子フィルムによるコーティングを施しています。そのため、胃内および小腸付近でのブデソニドの放出が抑制され、本剤が大腸付近へ移行すると、高分子フィルムが溶解して素錠部が腸液にさらされ、親水性基剤および親油性基剤が腸液の素錠部内部への浸透を抑制し、ブデソニドが徐々に消化管中に放出されます。即ち、本剤は、ブデソニドを潰瘍性大腸炎の標的部位である“大腸”に送達するとともに、送達部位でのブデソニドの“持続的”な放出が期待される放出制御製剤と位置付けられます。本剤は2023年3月現在、世界75以上の国または地域で承認されています。
なお、本剤の有効成分であるブデソニドは、肝初回通過効果によって糖質コルチコイド活性の低い代謝物となるため、経口投与によるバイオアベイラビリティが低いと考えられ、全身に曝露される糖質コルチコイド活性の軽減が期待される、アンテドラッグ※2型のステロイドといえます。既に、ブデソニドを有効成分とするいくつかの製剤が、局所に限定したステロイド作用を期待する適応症で臨床応用されています。
さらに本剤は、1日1回投与の経口剤であることから、良好な服薬利便性や服薬アドヒアランスが期待できます。
国内外で実施された軽症~中等症の活動期潰瘍性大腸炎患者を対象とした第Ⅲ相試験などの成績に基づいて、2023年6月に「活動期潰瘍性大腸炎(重症を除く)」を効能又は効果、「通常、成人にはブデソニドとして9mgを1日1回朝経口投与する。」を用法及び用量として、製造販売承認を取得しました。
- ※1:各種ステロイド製剤の【効能又は効果】、【用法及び用量】については、各製品の電子添文をご参照ください
- ※2:薬剤が曝露された局所で活性を発揮し、体内に吸収されると速やかに代謝されて不活化、または活性が低くなる薬剤
- 1)厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)令和5年度分担研究報告書『潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針』 令和5年度 改訂版(令和6年3月31日)
- 2)Ford, A.C. et al.:Am. J. Gastroenterol. 2011;106(4):590-599
- 3)Dignass, A. et al.:J. Crohns. Colitis. 2012;6(10):991-1030
- 4)Kamm, M.A. et al.:Gut. 2008;57(7):893-902
- 5)Rubin, D.T. et al.:Am. J. Gastroenterol. 2019;114(3):384-413
- 6)Raine, T. et al.:J. Crohns. Colitis. 2022;16(1):2-17
2024年9月作成
17309-6/N4 B2 MDC