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Information
開発の経緯
肺動脈性肺⾼⾎圧症(PAH)は、肺動脈圧の上昇が認められ(安静時平均肺動脈圧が25mmHg以上)、かつ肺動脈楔⼊圧が15mmHg以下かつ肺血管抵抗が3Wood単位(240dyn・sec/cm5)以上と定められています1,2)。肺動脈圧上昇の機序として、⾎管中膜平滑筋の肥⼤による肺動脈⾎管の収縮・攣縮、肺動脈⾎管内膜の増殖による有効肺⾎管床の減少及び肺動脈における微⼩⾎栓形成が考えられていますが、PAHの発症機序はいまだ⼗分に解明されていません。
主に肺疾患に由来する肺高血圧症(肺疾患に伴う肺高血圧症はニース分類[2013年]第3群:肺疾患および/または低酸素血症に伴う肺高血圧症)グループである間質性肺疾患に伴う肺高血圧症(ILD-PH)は、肺動脈圧の上昇が認められ(安静時平均肺動脈圧が25mmHg以上)、自他覚症状としては肺病変の併存によって息切れや低酸素血症が高度となる場合が多いです。ILD-PHの病因として、低酸素性肺血管攣縮、肺実質障害に伴う細動脈・毛細血管の圧排・閉塞(肺血管床の減少)、血管壁のリモデリングなどが挙げられています。
トレプロスト®吸⼊液1.74mg(一般的名称:トレプロスチニル)は⽶国のUnited Therapeutics社によって開発されたプロスタグランジンⅠ2誘導体製剤であり、血管拡張作用及び血小板凝集抑制作用により肺動脈の収縮及び血栓形成を抑制し、肺動脈圧及び肺血管抵抗を低下させることで、PAH及びILD-PHに対する有効性を示すと考えられています。2023年7月時点において、「PAH」を適応症として⽶国(2009年)、イスラエル※(2010年)、アルゼンチン(2015年)及びコロンビア※(2023年)の4ヵ国で、「ILD-PH※※」を適応症として米国(2021年)、イスラエル(2022 年)及びアルゼンチン(2023 年)の3ヵ国で承認されています。
さらに、トレプロスチニルを有効成分とする注射液は、2023年12月までに30ヵ国以上でPAH治療薬として承認されており、国内では持⽥製薬株式会社が2014年にトレプロスト®注射液20mg、50mg、100mg、200mgとして、効能⼜は効果「肺動脈性肺⾼⾎圧症(WHO機能分類クラスⅡ、Ⅲ及びⅣ)」の適応症で製造販売承認を取得しました。
注射液と吸入液では臨床的位置付けが異なりますが、利便性が高い吸入液を提供することは、国内のPAH治療における新たな選択肢としてPAH患者の⽣活の質の向上に貢献できると考え、持⽥製薬株式会社は2017年より本剤の臨床試験を開始しました。
国内第Ⅱ/Ⅲ相試験においてPAHに対するトレプロスト吸入液の有効性及び安全性が検討され、その結果、2022年12月にPAHを効能又は効果として本邦における製造販売承認を取得しました。
その後、ILD-PHを効能又は効果とする本剤の承認事項一部変更申請を行い、2024年9月に承認を取得しました。
- PAH:Pulmonary Arterial Hypertension:肺動脈性肺高血圧症
- ILD:Interstitial Lung Disease:間質性肺疾患
- PH:Pulmonary Hypertension:肺高血圧症
- ※NYHA 心機能分類Ⅲ度に限定
- ※※気腫合併肺線維症を含む
- 1)福田恵一 他:肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)
- 2)特発性/遺伝性肺動脈性肺高血圧症(IPAH/HPAH)診療ガイドライン
4. 効能又は効果
〇肺動脈性肺高血圧症
〇間質性肺疾患に伴う肺高血圧症
2024年9月作成
17050-6/N5 B2 GMJ