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クリニック訪問記

2025年12月01日公開

vol.12 ただしメンタルクリニックのタイトル画像

 兵庫県西宮市の閑静な住宅街に位置するただしメンタルクリニックは、精神科全般の診療を行うとともに、アルコール依存症をはじめ様々なアディクション関連問題の治療にも力を入れています。同クリニック院長の田中禎先生は、アドラー心理学に基づく診療を実践するとともに、アドラー心理学に関する勉強会や講演にも積極的に取り組まれています。今回は、田中先生に同クリニックの特徴やこだわったポイントとその理由、アルコール依存症をはじめとした精神疾患の治療に対する考え方などについてお話を伺いました。

施設紹介

■ ただしメンタルクリニック

兵庫県西宮市高松町4番37号 中林ビル西宮5F

田中 禎 先生
(ただしメンタルクリニック 院長)

地図の画像

アルコール依存症の治療体制に感銘を受けて
専門にすることを決意

田中禎先生の画像

田中 禎 先生
(ただしメンタルクリニック 院長)

 私は大阪医科大学を卒業して同大学の神経精神医学教室に入局し、その後は複数の関連病院に勤務しました。その間、様々な精神疾患の診療にあたりましたが、なかでも、新阿武山クリニックに勤務したときにアルコール依存症の治療を経験したことが大きな転機となりました。アルコール依存症の治療で重要なのは、患者さんだけでなくご家族も地域行政も一丸となって取り組むことです。こうした治療体制こそが私の理想とする医療だと深く感銘を受けたことをきっかけに、依存臨床に関わっていこうと思いました。
 病院に勤務するかたわらで、開業して自分のしたい医療をやってみたいという想いが強くなり、「もし半年経ってもこの想いが変わっていなかったら、開業しよう」と決めました。結果、半年後に自分の開業に対する想いを再確認できたので、開業に向けて準備を進めることにしました。

新大阪と神戸の中間地点である西宮に、
被災者の心のケアも目指して開業

田中禎先生のアイコン画像

 開業する場所は、最初から西宮に決めていました。その理由の一つは、当時はアルコール依存症を診療できるクリニックとして、新大阪には新阿武山クリニックが、神戸には宋クリニックがありましたが、その中間地点である西宮にもアルコール依存症を診療できるクリニックが必要だと考えたためです。また西宮は1995年に阪神・淡路大震災で甚大な被害を受けた地域であり、「開業するなら、被災された方々の心のケアもしたい」と考えていたことが、もう一つの理由です。こうした背景から、2000年9月に西宮市でただしメンタルクリニックを開業しました。
 当院のある西宮北口駅周辺は、進学塾が多数集まっている全国でも有名な激戦区です。そのため当院には受験絡みのトラブルでメンタルに不調を起こしてしまった親御さんが受診されることも珍しくありません。また、阪神・淡路大震災から年月が経過した今もなお、心のケアを必要とする被災者の方が当院にいらっしゃいます。私の専門が依存臨床なので、アルコールや薬物などの依存症の方が多いですが、長年うつ病や不安症を患っている治療抵抗性の患者さんも少なくありません。さらには、うつ病や不安症の患者さんがアルコール依存症や神経発達症を併発しているケースや、複数の依存症を併発した多重嗜癖のケースもあり、単一の疾患では説明できない患者さんが多いです。

さまざまな点にこだわったクリニック運営

田中禎先生のアイコン画像

 私は、いくつかこだわりを持って当院を運営しています。
 1つ目は、初診でのみ予約を受け付けており、再診は順番制で診察していることです。診察にかかる時間は、その時々の患者さんの状態によって異なるので、診察に時間がかかってしまった場合、その後の患者さんを待たせてしまいます。予約制というのは診察時間を患者さんと約束することに他ならないので、約束の時間を過ぎてしまうと、待っている患者さんにストレスを与えることになります。それならば最初から守ることを保証できない約束はせず、来院された方から順番に診察させていただくことに決めたのです。そうすることで患者さんは最初から待つことを前提に来院されるので、不要なストレスを感じにくくなると考えました。
 2つ目は、Webサイトを制作していないことです。Webサイトのメンテナンスや管理の煩雑さを避けたいという理由もありますが、一番の理由は、口コミや保健所からの紹介を通じて、本当に当院での治療が必要な患者さんに来てもらいたいと考えているためです。Webサイトを制作することは多くの方に当院を知ってもらうことにつながるかもしれませんが、一方で、依存臨床を行う医療機関は限られているため、あえてWebサイトによる不特定多数の方への情報発信については必要性を感じませんでした。
 3つ目は、一部の例外を除いて、主に成人の方のみを対象としていることです。再診を順番制にした場合、小中高の患者さんが通学しながら通院を続けることは、難しいかなと考えたためです。

待合室は、患者さんが快適かつ安全に過ごせるような空間に

田中禎先生のアイコン画像
待合室の画像

待合室。背の低い椅子や天井の青空の壁紙など、
こだわりが施されている。

観葉植物の画像

観葉植物。空気の清浄化だけでなく、
植物の成長が患者さんの楽しみにも。

 待合室の設備や内装、雰囲気作りにもこだわりました。待合室の椅子は、長く座っても疲れにくいだけでなく、背もたれが低めのものを採用しました。これは、椅子の背もたれが高いと圧迫感が増して部屋が狭く見えてしまうためです。すべての椅子を同じ向きに置き、患者さん同士が目を合わせないようにしました。また、患者さんがリラックスして待ち時間を過ごせるよう、待合室の天井には青空の壁紙を貼り、BGMとして自然音とイージーリスニング音楽をミックスしたヒーリングミュージックを流しています。
 さらに待合室には、サンスベリアやドラセナ(幸福の木)、ベンジャミンなどの観葉植物をたくさん置いています。観葉植物は空気をきれいにしてくれるだけでなく、通院を続けるとともに成長する植物の姿をみて喜んでいる患者さんもおられるなど、いろいろな側面で患者さんによい影響を与えているのではないかと感じています。
 一方で精神科においては、突発的に患者さんが危険な行動を起こさないための、さりげない工夫が必要です。それによりすべての患者さんが、安心かつ安全に院内で時間を過ごすことができます。患者さんが何か危ないことをするとき、注目を集めることのできる危険な場所を「舞台」として選んでいるので、そういった舞台を患者さんに与えないようにすることが大切だというのが、私の考えです。待合室はもちろん、院内のすべての窓にストッパーを付け、患者さんが窓から飛び降りることができないようにしていますし、待合室の観葉植物も、患者さんが簡単に持ち上げられないように重くてしっかりとしたものを選んでいます。非常階段の扉の側にも大きめの観葉植物を置いていますが、これは物理的に非常階段に出られなくしているわけではなく、何かしらの障害物が見えるだけで患者さんの抑止力として働くためです。

患者さん本人の意思を確認し、協働関係を築くことが治療成功のカギ

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 しばしば患者さん本人の同意がないまま、ご家族の方が患者さんを連れて来られることがあります。特にアルコール依存症では、その傾向が強いように思います。しかし受診することに同意していない状態で連れて来られた患者さんは、医師をはじめ医療従事者に敵対心を向けることも多く、治療をしてもなかなかうまくいきません。ましてや、院内で患者さんとご家族の方が喧嘩をするような事態になっては、他の患者さんに不安を与えてしまいますし、ビルのオーナーの方や他のテナントの方に迷惑をかけることにもなりかねません。
 こうした事態を避けるためにも、ご家族の方から受診予約の電話をいただいた場合は、必ず患者さん本人の了承があるかどうかを確認します。もし患者さん本人が受診を嫌がっているのであれば、まずはご家族の方だけでクリニックに来ていただき、患者さん本人への対応の仕方を学んでいただくようにします。そうすることで、患者さん本人とご家族の方の関係性が良くなり、次第に患者さん本人の治療の動機づけになっていきます。実際、ご家族の方が当院に相談に来てしばらく経ったあと、患者さん本人も受診に訪れるというケースもしばしば経験します。

アドラー心理学を活かした診療を実践し、
勉強会を通じた援助職支援にも注力

田中禎先生のアイコン画像

 私は医師になる前からアドラー心理学に強い関心を持っており、研修医時代には日本にアドラー心理学を広めた野田俊作先生の勉強会にも参加しました。そのため当院では、アドラー心理学に基づいた診察を取り入れています。アドラー心理学の思想の根幹は、「人間が健康的に生きていくこととは、他者への関心と貢献感を持ち、横の関係を目指すことである」という考え方です。こうしたアドラー心理学の考え方は、依存症を治療する際だけでなく、援助職の方が患者さんと接する場合にもあてはまります。
 しかし援助職の方がアドラー心理学を学ぶ機会はほとんどないため、患者さんとの関わり方に悩む援助職の方が私の元に相談に来ることが多々ありました。そこで当院では、援助職の方を対象としたアドラー心理学の勉強会を定期的に開催しています。勉強会の参加者は、医師や看護師などの医療従事者だけでなく、保健所関係の方や、教育関係の方など、幅広い職種の方がいらっしゃいます。近畿地方の近隣の方は当院に来られて対面で勉強会に参加していますが、今は勉強会をオンライン中継していますので、全国各地から多数の方々が参加できるようになっています。

患者さんが「この薬は自分に合っている」と
自信を持って言えるようになってもらうことが目標

田中禎先生のアイコン画像

 薬物治療に際して私が心がけていることは、本当にその人に必要な薬であるかどうかをしっかり見極めることです。特に私は依存症治療に力を入れているので、依存性の懸念のある薬剤は極力使用を避けていますし、他院でそのような薬剤を処方されていた患者さんでは、治療歴をしっかりと把握したうえで、より適切な薬剤に切り替えるよう努めています。
 また、患者さんが「この薬が自分に合っている(適している)」と自信を持って言えるようになることを目標に、薬剤の説明をしっかり丁寧に行うようにしています。これは、患者さんが私以外の医師の診察を受けることになった場合に、困らないように、次の医師に自分のことを伝えることができるようにするためです。また、患者さんに安心して治療を継続してもらうためにも、きちんと薬剤について理解してもらい、納得したうえで服薬してもらうことが大切だからです。もちろん必要に応じて薬剤を変更、あるいは服薬を中止せざるを得ない場合もありますので、そのためにも依存性の少ない薬剤を最初から選ぶことが大切であり、これも私の治療におけるこだわりの一つです。

アルコール勉強会では、断酒後の毎日を
健康に過ごしていくためのアドバイスを提供

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 当院では、アルコール依存症の治療プログラムの一環としてアルコール勉強会を開催しています。この勉強会では、断酒に成功した方々に向けて、断酒が治療のゴールではないことや、生活習慣の改善がこれからの毎日を健康に過ごしていくために大切であることを説明し、運動や食生活などの改善策をお伝えしています。
 そのポイントの一つとして、私は正しい姿勢を保つことの重要性を紹介しています。これは、姿勢の悪さが心身に悪影響を及ぼしており、姿勢を整えることで心身を整えることにつながるのではないか、と考えているためです。その際は、私自身が正しい姿勢や意識のしかたを実演しながら、患者さんにもその場で実際にやってみていただくようにしています。これも非薬物療法としての取り組みの一つといえるかもしれません。

今後

展望

患者支援にとどまらず、
地域全体の精神科医療の発展に貢献していきたい

 まずはこれまで通り、アドラー心理学の理論を臨床現場に取り入れ、患者さんとの関係性を重視した丁寧な治療を実践していこうと思います。また、私は地域の保健所や精神保健センターの嘱託医を務め、依存症に関する家族相談や精神科全般に関する家族教室の講師、市が運営するピアサポート活動の相談員や保健師への研修・指導などを行っていますので、こうした援助者や一般の方々を対象とした教育活動や地域活動にも、引き続き尽力していきたいと思います。

田中禎先生の画像

2025年12月作成

17813-1 28 GT