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痛風列伝 vol.6
便秘のためにバターを
好んだルター
生涯の終盤の3分の1は病気との闘い
16世紀のヨーロッパで巻き起こったキリスト教の革新運動である宗教改革のきっかけをつくり、中心人物となったマルティン・ルター。長きにわたって改革をけん引し偉大な業績を残した彼を、強靭な精神と肉体の持ち主であったと思う方が多いかもしれませんが、実は一生の間に多くの重病にかかり、生涯の終盤の3分の1は特に悲惨だったようです。
30代から頑固な便秘、不眠に悩まされ続け、40代に入ってからは、めまい、耳鳴り、頭痛、難聴が起こるようになり、同時に尿路結石、排尿障害、痛風発作をはじめとする生活習慣病に繰り返し襲われました。
バターは健康食品!?
ルターがどうして痛風になり、どうして悪化の一途をたどってしまったのでしょうか。そこには彼の持病が大きくかかわっています。
多くの病の中でも特にルターを苦しめたのが便秘で、「汗が出るほど力んでも排便がない。血だけが出る」などと友人宛の手紙で訴えるほどでした。そこで便秘を改善するものとしてルターが目をつけたのがバターです。彼にとっては下剤よりも朝の小さじ6杯のバターの塊がよく効き、頭痛や体調不良にも効果があったそうです。ルターは「バターは健康食品」だと言ってはばかりませんでした。具体的に1日にどの程度のバターを摂取していたのかは不明ですが、「健康食品」としてかなりの量を摂っていたのは想像に難くなく、高脂肪食を助長していたに違いありません。こうした食生活が痛風を引き起こす一因となったと考えられます。
排尿障害のためにビールを飲む
そして、ルターが排尿障害のために好んだのがビールです。ご存じのとおりビールには利尿作用がありますから、何よりの利尿剤だったと推察されます。また、ルターはビールが自分にとって朝の排便や入眠を促すものと思い飲んでいました。
バターやビールが痛風患者において時に「毒」になると知らなかった当時のルターにとって、それらはいろいろな病気を癒してくれる「薬」だったとは、なんとも皮肉な話です。
- 参考文献
- 滝上 正. マルチン・ルターの病歴 日本医史学雑誌 57(4), 433-439, 2011
フリーデンタール著「マルティンルターの生涯」新潮社
