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痛風列伝 vol.9
ブランデー好きが高じて
痛風になったアン女王
グレートブリテン王国の初代女王
痛風であった有名人として、よく名前が挙がるアン女王ですが、彼女を詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。アンは1702年にイングランド王国とスコットランド王国の国王(当時は、同一の君主がイングランド王とスコットランド王を兼ねる体制でした)に即位します。しかし、彼女に後継者がいなかったことで王位継承問題が勃発、イングランド王国とスコットランド王国との間で対立が生じます。ただ、スコットランド王国が経済的に困窮したため、結局、両国は今のイギリスの基盤といえるグレートブリテン王国として統合されることになり、1707年、その記念すべき初代女王となったのがアンでした。
そのようなアンですが、冒頭でも触れたように痛風に罹患してしまいます。
ニックネームは「ブランデー・ナン」
アンは、30代前半のころに痛風を発症したようです。原因は極度の肥満によるもので、アルコール好きに起因していたとされています。女性痛風のリスクの1つにはアルコールの多飲がありますが、アンはブランデーが大好物で、「ブランデー・ナン」(Brandy Nan)というニックネームをつけられるほどでした。痛風の症状は特に足に顕著にあらわれ、37歳のときの戴冠式の際には歩行がままならなくなっていたため、輿に担がれてウエストミンスター寺院へ向かったという逸話があります。
それでも生活習慣は改善されず、晩年も肥満が進行するとともに痛風の痛みもあったのでしょう、宮廷内の移動にさえ車椅子を使用していました。逝去後に遺体を収容する棺桶は、アンが太りすぎていたので正方形に近いものが使われたとの話も残っています。
痛風は女性に少ない!?
さて、アンは30代前半ですでに痛風であったと書きましたが、痛風は男性に多く女性には少ない病気と言われています。
その理由は、女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」にあります。エストロゲンには尿酸の排泄を促す作用があるため、尿酸値の上昇が抑えられます。結果、痛風の要因となる高尿酸血症になりづらくなるので、女性の痛風の罹患率は低くなるというわけです。ただし、閉経後は女性ホルモンの分泌が低下するため、閉経を迎えた女性は尿酸値が高くなり、痛風にもかかりやすくなります。
もちろん閉経以前であっても、食生活の乱れによる肥満やストレス、運動不足などで痛風を発症してしまう女性は皆無ではなく、アンもそのひとりでした。アルコールの多飲や肥満が大きな原因と既述しましたが、大国のトップに君臨した彼女は、もしかしたら痛風になりながらも、重責によるストレスから逃れようと飲まずにはいられなかったのかもしれません。
- 参考文献
- Ross J. J Med Biogr;2015 23:54-9
Emson HE. BMJ;1992 304:1365-6
