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痛風列伝 vol.7
“暴君龍”ティラノサウルスも
かかった痛風
人間以外にも悩まされる生物が
暴飲暴食といった生活習慣が発症要因のひとつとなる痛風は、ぜいたくな食生活が送れる人間だけの疾患のように思われがちですが、実は違います。たとえば鳥類や一部の爬虫類(トカゲやカメ、ワニなど)でもしばしば痛風が見られるそうです。
そして、今から約6,600万~6,800万年前、地球上に君臨していた肉食恐竜の代表格であるティラノサウルスもまた、痛風に罹患していた可能性があります。
化石『スー』から見つかった小さな病変
1990年の夏に発見され、米国フィールド自然史博物館に『スー』と名づけられて収蔵されているティラノサウルスの化石は、90%以上が残存する非常に良い状態で見つかりました。そのスーの右前肢の中手骨には、痛風に特徴的な硬化縁を伴う球状の骨びらん病変が2つありました(それぞれ11.5×9mm、7.1×5mm)。これを受けて、スー以外のティラノサウルスの標本に関しても調査がなされたところ、同じような骨病変を持つ個体が見つかり、ティラノサウルスが痛風に罹患しやすい体質であった可能性が示されました。
スーが生きていたときの想定される大きさは、全長約12m、腰までの高さが約4m、体重は8~14t程度で、ティラノサウルスがいかに大きな恐竜であったかがわかります。その巨体に対して、病変はごく小さいものでした。しかし「風が吹いても痛い」と言われる痛風ですから、もしティラノサウルスが痛みを感じられるとしたら、人間の痛風患者同様、激痛に苦しめられていたかもしれません。
ウリカーゼの存在が発症を左右する
ところで、痛風にかかる動物とそうでない動物の異なる点は何でしょうか。その背景には、尿酸の代謝酵素であるウリカーゼの活性の損失と、それによる体内の尿酸濃度の上昇が関係しています。人間や類人猿はウリカーゼの機能が失われているため体内の尿酸濃度が高いのですが、ウリカーゼの機能を保有する動物は尿酸を代謝できるため体内の尿酸濃度が低く、痛風を引き起こしにくいというわけです。
ティラノサウルスという属名は、「暴君」と「トカゲ」を意味する古代ギリシア語を流用した合成語であり、その恐ろしさが名前からも伝わってきます。ティラノサウルスの漢名は「暴君龍」と言うそうですが、もしかしたら痛風は、「暴君龍ですら追いつめていたかもしれない、手ごわい疾患」といえるかもしれません。
- 参考文献
- Rothschild BM, et al. Nature 1997 ; 387 : 357
