鑑別編
内視鏡像を基に診断してみよう
排便困難感が改善しない患者さんの診断名は?
難易度:★☆☆
【監修】
岩手医科大学 内科学講座消化器内科分野 教授 松本 主之 先生
【出題・写真提供】
岩手医科大学 内科学講座消化器内科分野 特任講師 永塚 真 先生
65歳 男性
- 20歳頃から「排便困難感」があり、排便時にいきみぐせがあった。
- 排便困難感が改善せず、前医で施行された大腸内視鏡検査で直腸粘膜に発赤が認められたため、精査目的で当科紹介となった。
● 大腸内視鏡検査(直腸)
- 既往歴
- :高血圧症
- 内服歴
- :降圧薬
- 家族歴
- :特記事項なし
- 排便回数
- :1日1回、排便時にいきみあり
- 顕血便
- :なし
- 体温
- :36.3℃
- 脈拍数
- :67回/分
- 海外渡航歴
- :なし
- アレルギー歴
- :なし
- 血液検査
- :WBC 4140/μL
RBC 447万/μL
Hb 14.7g/dL
Alb 4.7g/dL
CRP 0.1mg/dL未満
直腸粘膜脱症候群
解説
大腸内視鏡検査では、下部直腸(Rb)から直腸S状部(RS)にかけて、発赤調隆起が集簇している。隆起の表面にびらん、潰瘍や滲出物の付着はなく、介在粘膜は正常である。隆起はRbに目立ち、口側に向かうにつれて消退する。
生検では、腫瘍性変化は認めず、再生性上皮と粘膜固有層に粘膜筋板から縦走する平滑筋組織の増生(fibromuscular obliteration)が認められた。
排便時のいきみ習慣もあることから、「直腸粘膜脱症候群」と診断した。